【プロ野球・ヤクルトスワローズから競輪へ】松谷秀幸選手

2023.06.30

競輪選手には“様々な過去”を持つ選手たちがいます。

プロ野球選手、Jリーガー、オリンピックメダリストだった“過去”を持つスポーツエリートから、学校の先生、会社員、公務員、美容師などの“過去”を持ち活躍している選手も!

 

競輪選手を目指した理由(わけ)

 

そんな“様々な過去”を持つ競輪選手がどんな人生を歩み、どんなことをキッカケに競輪選手になる決意をしたのかをインタビュー。

自転車とは無縁だった“過去”を経験したからこそ分かる「競輪選手という職業」の魅力について語ってもらいます。

 

松谷秀幸 Hideyuki Matsutani(神奈川・96期)

 

 

松谷選手は元プロ野球選手。

沖縄県の甲子園常連校・興南高校でエースピッチャーとして活躍し、甲子園出場こそ叶いませんでしたが、高校生ながら最高球速149km/hを記録。

2000年のドラフトでは3位指名を受けて、高卒ルーキーとしてヤクルトスワローズ(現:東京ヤクルトスワローズ)に入団しました。

度重なる肘の故障もあり2006年、戦力外通告を受けました。

ヤクルト本社でのサラリーマン生活を経て、2009年、競輪選手としてデビュー。

2013年にはGⅢ『花月園メモリアルin小田原』でグレードレース初優勝。

現在はS級1班に在籍し、40歳にして競輪界の最前線で戦い続けています。

 

 

プロ野球選手になるまで

 

大阪府大阪市で生まれました。

習い事は何もしていなかったのですが、中学校の体力テストでソフトボール投げをした時に、野球をやっている子よりも記録が良かったんです。

それで、「もしかしたら、できるかも」と思い、中学2年生から野球部に入りました。

肩だけは強かったので、ポジションはピッチャー。

すぐにレギュラーとして投げるようになりました。

 

僕の家は母子家庭で、授業料が免除になる特待生のような制度をもらえないと、高校へ進学できませんでした。

進路に悩んでいた時に、沖縄県の興南高校が野球推薦の声を掛けてくれました。

 

 

全く縁のない沖縄へ1人で行かなくてはならなかったので、本心は「行ける高校はここしかないんだけど、行きたくねえな〜」でしたね。笑

よそ者扱いはされるし、方言もよく分からないし、慣れるまでは本当に大変でした。

興南高校は当時から強豪校で、練習もすごく厳しかったので、同級生80人以上が入部して残ったのは14人。

そんな中、1年生の時からベンチ入りして2年生から1番(エースナンバー)をもらえるようになったんです。

3年生の夏の大会は準決勝で負けてしまったので、甲子園には行けませんでした。

 

 

——高校卒業後の進路はどのように考えていたのですか?

 

就職して働くつもりでしたが、株式会社日立製作所の野球部が受け入れてくれるということで、社会人野球をやるつもりでした。

日立製作所は大企業で、引退後も“安泰”だと聞いていたので、正直ホッとしましたね。

ドラフト会議の日は、いつも通り学校で授業を受けていました。

 

そしたら先生が急に教室に入ってきて、「お前、ドラフトにかかったぞ!」って。笑

 

「え〜!!?? まじっすか?」

僕も周りも、みんなビックリですよ。笑

まさか指名されるなんて思ってなかったので。

でも、嬉しかったですね。

 

 

 

ヤクルトスワローズに入団

 

沖縄での1軍キャンプに呼ばれて行くと、テレビで見ていた選手がたくさんいました。

古田(敦也)さんが「(球を)捕ってやるよ」と声を掛けてくれて、めちゃくちゃ緊張しましたね。

でも、そこにいるのは“プロ野球選手”。

全てにおいて、レベルが全く違いました。

僕は“プロ野球選手になったこと”に満足してしまったんです。

練習自体は高校のほうが厳しかったし、とりあえず日々の練習はこなすけど、あとは怠ける…。

プロ意識が欠けていましたね。

 

入団初期から2軍で先発させてもらっていましたが、2年目に肘を壊しました。

「やっちまったな、まあ、なるようにしかならない」と、そんなに深く考えていなかったんです。

やがて故障も治り登板し、また痛めての繰り返し。

結局、肘の手術を3回受けました。

 

普通なら一度故障すると、同じ故障をしないように気を付けて過ごすじゃないですか。

でも、当時の僕は「なんとかなるっしょ!」と思っていて、故障を繰り返しました。

毎年、オフ(シーズン)を迎える度に「クビになるかも」とビクビクしながら続けていましたね。

2006年のオフに戦力外通告を受け、その時に初めて「人生の危機」を感じました。

 

 

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