【市役所職員から競輪へ】皿屋豊選手

2024.03.15

公務員を辞めて競輪選手になろうと決意したきっかけは、愛好会で知り合った師匠の舛井(幹雄)さんに相談して、「その気持ちがあれば大丈夫だよ」と言ってもらったことです。

人間として尊敬していた舛井さんの言葉に背中を押されました。

奥さんに競輪学校を受けることを伝えると「ああ、そうなん」って、そっけなかったんです。受かると思っていなかったんでしょうね。

いざ一次試験に受かると、「辞めてくれる」と猛反対(笑)。1歳になる子どももいましたから。最終的には、認めてくれたというか諦めた感じでした(笑)。

 

父は競輪選手になることをすごく喜んでいました。父も学生の頃にプロ野球選手の選考を受けていたんです。プロスポーツ選手への憧れもあり、自分の夢を息子が叶えてくれたような感覚だったのかな。

今では僕以上に競輪を見ていて、「この前、同期の誰々が勝っとったな」とか、僕の知らない情報まで教えてくれるんですよ(笑)。老後の楽しみとなっているようで、親孝行になりました。

 

市役所の同僚たちも同じく、応援してくれました。

公務員って、別の夢を持っていたけれど、現実との擦り合わせをして就職した人も多いと思うんです。それを“僕の競輪選手になるチャレンジ”と重ねて、応援してくれたのかなと思います。

 

 

 

「S級で最低10年」

 

競輪学校合格に向けて練習して、半年ほどで合格。市役所は3月で退職し、33歳の4月に競輪学校に入学しました。

競輪学校は若い子たちも仲良くしてくれて、自分も若くなった気持ちで楽しかったです。

同期には1歳下の野口裕史をはじめ“年配”の選手もいて(笑)、今、S級で戦っている選手も多いんです。若い同期と会うと「111期は、おじさんらが頑張っとんな」と言われます(笑)。

在学中に次男が生まれたので、奥さんとの手紙のやりとりで名前を決めたのも思い出です。

 

2019年に34歳でプロとしてデビュー。公務員時代とは生活もガラリと変わりました。

練習の合間に昼寝をするのですが、最初は「世の中のサラリーマンは働いとんのに、寝とっていいんかな?」って、すごく抵抗がありましたね(笑)。

ギャップだらけでしたが最近はなじんできたかなと思います。

 

 

デビュー当初から「1日1日が勝負」だという思いでやってきました。

舛井さんには「S級で何年やれるかが勝負。最低10年はできないと、(競輪選手に)なった意味はないよ」と言われていたんです。

デビューから3年でS級に上がる計画でしたが、1年半で上がることができて、こんなにスムーズに行くとは思わなかったのでびっくりしました。

 

でも、S 級に上がった最初のレースでは、3日間9着、9着、9着。

「えらいところに来ちゃったな、やってけんのか!?」という思いでしたが、今考えると気持ちが焦っていましたね。自分の脚力に見合わないようなレースをしていたし、S 級だから何か特別なことをしなければと2~3カ月は空回りしていました。

走っていくうちにペースの作り方や組み立て方などを学び、1年ほどでようやく成績が上がってきました。

 

 

競輪界のトップ50人くらいは、自転車への向き合い方やモチベーションのレベルが2段階くらい違うなと感じるんです。そんな選手たちと勝負するには、もっと努力が必要だと感じています。

現在の目標は地元の松阪記念での優勝、GⅠ決勝進出です。

ビッグレースでの手応えも掴みつつあるので、結果を出していけるようこれからも頑張っていきたいです。

 

 

競輪選手になって良かったこと

 

僕は自転車が好きで、自転車の練習も好きだったので、それに時間やお金をつぎ込んでいたところに、さらに家族の協力もあって競輪選手になれました。

そのおかげで、公務員の時よりも家族孝行ができるようになりましたね。

奥さんも最初は“安定した職”の公務員を辞めて小言を言っていましたが、最近は言わないので少しは満足してくれているのかな?(笑)子どもたちもレースのライブ中継を見て、応援してくれています。

 

 

競輪選手になってSNSなどを通じて多くの応援のメッセージをいただいています。

その中でも特に社会人の方からのメッセージが多くて。それは、こういう境遇の僕が、スポーツエリートたちに勝つ姿を見ることが痛快なのではないでしょうか。

“会社員や公務員の代表”じゃないけれど、それこそが僕の存在意義だと思っています。

 

 

皿屋豊 Yutaka Saraya

 

1982年12月27日生まれ、三重県多気郡明和町出身。

身長167.7cm、77.5kg。

登録地は三重県。

2017年7月6日に111期としてデビュー。

 

車好きの皿屋選手。最近、念願だった「ポルシェ 718ケイマンGT4」を購入したそうです。

「左ハンドル、ミッション車、2シーターと、マニアックすぎる車なんですが(笑)、すごくうれしいです。週末には息子とドライブをしています!」

 

◆詳しいプロフィールと出走情報はこちら

 

 

<経歴>

1982年 三重県多気郡明和町で誕生

1995年 中学校では野球部に所属

1998年 相可高校に進学

2001年 (現:伊勢市役所)に就職

2015年 和歌山国体の1kmタイムトライアルで8位入賞

2016年 伊勢市役所を退職

2016年 競輪学校(現:日本競輪選手養成所)入学

2017年 競輪選手としてデビュー

2021年 S級1班に昇級

 

    この記事が気に入ったら
    いいね! してね。

    その他の競輪選手を目指した理由(わけ)

      おすすめの記事