プロ選手になった今「自分にはこの道しかない」 犬伏湧也選手(徳島県・119期)
2024.09.04
男女合わせて約2,400名いる競輪選手には、さまざまな経歴や趣味を持った選手がいます。『推すスメ!選手インタビュー』では選手個々のプロフィールを、インタビューを通してひもといていきます。
今回は徳島県・119期、現在29歳の犬伏湧也選手にインタビューしました。
小学生の頃に始めた野球で外野手として活躍し、駒澤大学に進学。夢は「プロ野球選手になること」でした。しかし、大学の先輩だった現メジャーリーガーのレベルの高さを目の当たりにしてプロ野球選手になることを断念。
そんな時に知人から勧められたのが競輪選手。それは祖父の職業でした。2年連続で日本競輪選手養成所不合格となり、一度はパーソナルトレーナーの仕事を始めましたが、地元・徳島の競輪選手仲間に背中を押され再起。3回目の受験で合格し、2021年にデビューしました。
昨年は3月の大垣記念でGⅢ初優勝。GⅠでは『日本選手権競輪』、『オールスター競輪』、『寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント』で3回決勝に進出する飛躍の1年となりました。
今永昇太さんのレベルを見て
祖父が競輪選手だった小林峰夫なんですが、物心ついた頃には引退していましたし、父は全く違う仕事をしていたので、競輪のことはよく知らずに育ちました。
小学校2年生の時に少年野球のチームに入りました。中学からは部活で硬式野球を始めて、ポジションは外野手。足の速さを生かしたプレーが得意でしたね。高校は(徳島県の私立)生光学園で甲子園出場を目指していましたが、3年生の時の県大会ベスト4が最高成績でした。
駒澤大学に進学してからも毎日、野球の練習に打ち込んでいました。「プロ野球選手になりたい」という思いで頑張っていたんですが…。先輩の今永昇太さん(現MLBシカゴ・カブス)を見て、「“プロ”になるのは無理だろう」とレベルの違いを目の当たりにして、心が折れてしまいました。
“夢”を見失って「これからどうしよう…」と悩んでいた時に、地元の知人が競輪を勧めてくれたんです。祖父が競輪選手だったということもあって、声をかけてくれたようです。その知人から小倉竜二さんを紹介してもらいました。
最初、小倉さんとは電話でお話しさせてもらいました。『競輪がどんなスポーツなのか』ということを教えてもらったのですが、小倉さんの声が怖すぎてビビりまくったことを覚えています(笑)。
その時に「野球での経験を無駄にせずもう少し頑張って、プロ野球はダメでも、社会人野球という道もあるんじゃないか」と言われました。今考えると、野球に未練があるなど、中途半端な気持ちで競輪の道へ進んでも戦っていけないということを伝えたかったんだと思います。
「プロ選手になりたい」という気持ちが強かったので、競輪でその夢をかなえたいという決意が固まりました。大学を2年生の途中で中退して、すぐに自転車の練習を始めました。
同級生の後押し
翌年、日本競輪選手養成所の技能試験を受験しました。合格タイムは出せたのですが、筆記試験で落ちてしまったんです。それが2年連続で続いてしまって…。いつまでも親に頼って生活するわけにもいかず、パーソナルトレーナーの仕事を始めました。
パーソナルトレーナーはやりがいもありましたが、「このままでいいのか?」と毎日モヤモヤするばかり。「やっぱりプロ選手になりたい」という気持ちもどんどん強くなっていきました。
そんな時に、競輪選手としてデビューした徳島の同級生たちが「もう一回受験して、一緒に(競輪を)やろうよ」と背中を押してくれたんです。最後の挑戦だと決めて臨んだ3回目の受験で、合格することができました。
競輪選手になるまでに人よりも長い時間がかかったからこそ、「自分にはこの道しかない」という気持ちで集中して向き合えています。
デビュー後は順調にS級まで上がることができました。昨年は3月にGⅢを初優勝して、GⅠでは3回決勝に進出できました。この成績を残せたのは、小倉さんに練習をしっかり見てもらったおかげだと思います。
長い距離を“もがく”ことなど苦手だったことを指導してもらい、どんなレースにでも対応できるよう、練習メニューを組むところから細かくアドバイスをいただきました。この成長を無駄にせず、今年もGⅠで結果を残せるように、しっかり考えながら日々の練習とレースに取り組んでいきたいです。
そしていつか絶対にS級S班になりたいです!そのために、もっと力をつけていきたいと思います。
成績が良い時も、悪い時も変わらず応援してくれるファンの方々がいてくれて、本当にありがたいです。頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!
犬伏湧也 Yuya Inubushi
1995年7月22日生まれ、徳島県板野郡北島町出身
身長170.5cm
登録地は徳島県、ホームバンクは小松島競輪場
2013年 駒澤大学に入学
2015年 駒澤大学を中退 地元・徳島で自転車の練習を開始
2019年 日本競輪選手養成所に3回目の受験で合格
2020年 日本競輪選手養成所に入所
2021年 119期で競輪選手としてデビュー
2023年 大垣記念『水都大垣杯』でGⅢ初優勝
2023年『日本選手権競輪』で初のGⅠ決勝進出
2024年 小松島記念『阿波おどり杯争覇戦』で地元GⅢ初優勝
休日は、子どもと一緒に遊んでいます。1歳半と生後6カ月の子どもがいるんです。大変な時もありますが、すごくかわいいですね。
前はゴルフにもよく行っていましたが、最近はしっかり休んで、翌日の練習に備えています。
車も好きです。愛車はレンジローバーと、最近アストンマーティンを買いました。値段は想像にお任せします(笑)。
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