日刊スポーツ「Girl’s Collection 2020」 岩崎ゆみこ選手編
2020.02.21
殻を破れない感じ
昨年7月1日宇都宮のデビュー戦は何もできないままに終わって6着。
その後もなかなか勝てない日々が続いた。
岩崎 今から思えばデビュー戦はホワホワッとした感じでした。
気持ちが入らないまま7月を迎えてしまいましたね。
初勝利(8月30日、函館、通算12戦目)はうれしかったけど、いいレースだったかと言われれば、そうでもなかった。
今までで一番良かったレース?
う~ん…
9月30日の青森では打鐘4角からカマして逃げ切った。11月30日の向日町ではガールズ屈指の強豪・尾崎睦を差しての1着もある。ここまで決勝進出も4回。決して悲観するデビュー年ではないように映るが、本人は全く納得していない。
岩崎 レースで考えすぎてしまうことが多いですね。
「できなかったらどうしよう」とか。
分かってはいても、なかなか殻を破れない感じ。
気持ちの部分ですね。
幸か不幸か、今年前半は地元の取手がバンク改修のため使用できない。
これがいい方向に転がるかもしれない。
岩崎 実家が大宮だし、同期の加藤舞さん(秋田)も冬季移動しているので、大宮で練習させてもらおうかと思っています。
それから、小林莉子さん(東京)にも「立川に来ない?」と誘っていただいているので、一緒に練習させてもらおうと思っています。
ガールズでは、他地区、他競輪場への出稽古でガラリと変わる選手が少なくない。
岩崎にとっても武者修行が功を奏す可能性は十分だ。
岩崎 今期は競走得点で50点以上を取りたい。
今年は今までお世話になり、支えてくれた方々にいろいろな形で恩返しできる年にしたいです。
努力は裏切らない
岩崎はバスケでも遅咲きだった。
努力は裏切らない。
年女の20年は蕾がジワリとほころぶ1年になりそうだ。
【師匠・戸邉裕将選手のコメント】
強くなるのも自分、弱くなるのも自分
自転車経験はなかったけど、ウエートの重量、垂直跳び、パワーマックスなど、すべての数値が高く、いいものを持っているなと思った。
ただ(俊敏さが必要な)バスケットで日本一になった割には、自転車では周りに他の車がいると力を出し切れないところがある。
今後は、狭い所を一瞬ですり抜けるような足をつけてほしい。
他地区に練習に行って刺激をもらうのもいいんじゃないかな。
僕は師匠の戸辺英雄さんから「強くなるのも自分、弱くなるのも自分」と言われてきた。
ゆみこにもそう伝えている。
負けず嫌いな性格はいいし、これからも自分で納得しながら頑張ってほしい。
師匠の戸邉裕将(左)と競り合う!?岩崎ゆみこ(撮影・栗田文人)
【プロフィール】
岩崎ゆみこ(いわさき・ゆみこ)
1995年(平8)2月8日、埼玉県生まれ。
学生時代はバスケットボールで活躍し、18年に競輪学校に116期生として適性入学し、在校7位(59戦14勝)で卒業。
通算43戦5勝。総収得賞金は342万4000円。
趣味はネイル。好きな芸能人はAAAの西島隆弘、田中圭。家族は両親と兄、姉、弟。
162cm、67kg。血液型A。
ネイル(本人提供)
スポーツ一家
岩崎を含めて4人のきょうだいは皆スポーツが得意だ。
兄優一さん(27)は社会人野球・三菱重工名古屋の内野手として18年日本選手権V。
姉みさこさん(25)もかつてバスケの社会人リーグで活躍しており、弟慶久(よしひさ)さん(17)も現在、高校でバスケに夢中だという。
岩崎は「私も負けずに頑張りたい」と励みにしている。
岩崎は人命救助に一役買っている。
競輪学校入学直前の昨年4月、師匠の戸邉裕将とその師匠の戸辺英雄氏(引退、写真)と3人で筑波の峠に遠乗りに出掛けた時のこと。
約90km乗り込んでの帰り道、突然、英雄氏が倒れた。
心筋梗塞だった。
通り掛かった人とともに裕将が心臓マッサージを施す間、岩崎はAEDを求めて商店街を探し回った。
レーサーシューズでは走れないため、これを脱ぎ捨てはだしで疾走。
ようやく、数軒目に飛び込んだ歯科医院にAEDがあり、英雄氏は蘇生したという。
「探している時は〝ありませんでした、じゃ帰れない〟と必死でした。足の裏? ホッとした後に見たら小石がいくつもめり込んでいて、急に痛くなりました」と振り返る。
英雄氏はこれが契機になって引退したが、今は元気に過ごしている。
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