KEIRIN報知 命をかけて走れ

2020.02.03

#メディア #自転車競技 #インタビュー

※この記事は2020年1月29日付けのスポーツ報知に掲載されたコラム「KEIRIN報知」です。

 

 

64年東京五輪のレジェンド大宮政志さんが日の丸レーサーへ闘魂エール 命をかけて走れ

ロードで60年ローマも出場

1960年ローマ、64年の東京五輪自転車競技のロードに出場した大宮政志さん(81)が、2018年4月、日本競輪選手養成所(静岡・伊豆市)の試験に合格するための実技、学科の指導を行う「大宮道場」を立ち上げ、熱血指導を行っている。
すでに2人がデビューを果たしている。

衰えを知らない大宮さんにローマ、東京五輪を回顧してもらい、現在の大宮道場を語ってもらった。

(永井順一郎)

 

 

81歳熱血 立川からスター輩出を 「道場」立ち上げ競輪選手の卵育成

「棄権なら国民に申し訳ない」

81歳とは思えない元気な姿で現れた。背筋はピンと伸び、どうみても80オーバーには見えない。
一つ一つの言葉もはっきり、力強く響き渡る。

2度の五輪経験がそうさせているのか?
競輪に対する愛情がそうさせているのか?

取材するこちらが圧倒されるオーラを醸し出していた。

 

初出場となった60年のローマ大会は、自転車のトラブルで棄権。
ほろ苦い五輪となってしまった。

それから4年。
63年のプレ五輪では好結果を残し、本番の東京ではメダル候補と呼ばれた。

「東京では負ける気がしなかった。それだけ厳しいトレーニングをこなしてきたから。ローマが終わってから合宿所の壁に、世界の一流レーサーの写真を貼って『負けないぞ』ってね」。

雨が降って自転車に乗れない時は、高尾山の頂上までランニング。

ローマ大会の屈辱を晴らすために、必死だった。
いや命をかけていた。

 

東京五輪のロードレースで激走する大宮さん(本人提供)

 

 

いざ本番。

ここまで自転車のトラック競技は全滅。
「大宮、頼むぞ」の声が日本中から沸き起こった。

日本の、国民の期待を背負っている。
絶対に負けるわけにはいかなかった。

1周約24キロのコースを8周。

高尾駅近くをスタートすると、沿道には多くのファンが詰めかけ、大宮さんに声援を送った。

1周目は順調だった。

だが、2周目にアクシデントが起こり、巻き込まれてしまった。
前の選手が転倒し、それを避けることができなかった。

「まさか落車とは。穴があったら入りたい気持ちだった。このまま棄権なら国民に申し訳ない」。

しかし、大宮さんは諦めなかった。

幸いにも自転車の損傷はひどくなく、走行は可能だった。
ケガもしていたが、痛みとかは関係なかった。
自転車が大丈夫な以上、リタイアするわけにはいかない。

それから魂の走りで追い上げた。

「たら、ればは勝負事に禁物なんだけど、もし落車していなかったらメダルは取れた」と振り返った。

猛追したが届かず、集団でゴール。
結果は36位。

2度目の五輪も期待に応えることはできなかった。

 

当時は団体戦もあった。大宮さんがどこを走っているか本人も判別不能(本人提供)

 

 

日本で1番の競輪場と言われる立川。
最高峰の「KEIRINグランプリ」の第1回大会を開催するなど、常に競輪界をリードしてきた。

しかし、最近は立川をホームバンクにする選手が減ってきた。
そこで競輪場、立川市自転車競技連盟、競輪選手会立川支部がスクラムを組み、立川競輪所属のスター選手輩出を目的として、育成プログラムを2018年に開始。

指導者として大宮さんに白羽の矢が立ち、競輪選手育成塾「大宮道場」が設立された。

 

熱い眼差しで若手を指導する大宮さん

 

 

現役の山崎充央(45)=S級2班、79期=、大宮さん指導の元、「大宮道場」1期生からは山本修平(24)、武田亮(20)=ともにA級3班、115期=の2人がプロとして活躍している。

2期生の鈴木玄人、山本勝利、水森湧太は現在、117期生として日本競輪選手養成所に在籍。

このほど初めて女子の星野しほさんが120期生に合格。
4期生として女子大生も所属している。

大宮さんは言う。
「昔と違うから、若い子には強制しない。自分も勉強しながら成長させてもらっている」。

昭和の指導法から平成を経て、令和の指導法は対話を重視。
力で抑え付けることはしない。

実技だけでなく、学科対策として講師を招くなど、万全の態勢でサポートしている。

 

厳しさの中にも笑顔あり。これが大宮道場だ

 

 

レジェンドは今夏の東京五輪についても言及した。

「参加する選手は楽しむのではなく、命をかけて走れ。楽しんでは力を出し切れない」。

56年前の日本選手団のブレザーを着こなしながら熱く語った。

 

64年東京五輪のブレザーが入っている衣装ケース

 

 

大宮政志(おおみや・まさし)

 

56年前のブレザーを着こなす大宮さん。当時と体形はほとんどかわっていない

 

1938年3月10日岩手県生まれ、81歳。
60年ローマ、64年東京五輪後、競輪選手として活躍。
96年、58歳まで現役。
通算1667戦269勝。
引退後は東京・昭和第一学園高自転車競技部のコーチを務めた。

 

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