【デイリースポーツ・KEIRIN屋】新人競輪選手の半田水晶、土井慎二を特集!

2025.04.28

2025年4月26日 デイリースポーツ掲載記事

 

今回のKEIRIN屋は5月に開催されるルーキーシリーズで競輪選手として各地でプロデビューを果たす127期(男子)、128期(ガールズ)を紹介する。

ガールズの注目は筑波大大学院修了で円盤投げの選手から転身した半田水晶(みずき、27)=茨城。男子はアマ野球のトップ選手から父に憧れて競輪選手を目指した土井慎二(28)=岡山=をピックアップした。

 

半田水晶

異色の経歴を持つルーキーが誕生する。筑波大大学院修了で円盤投げの選手だった半田。一般企業に就職後の23年6月には日本選手権では5位に入る実力者だったが、自分の可能性を試したくて、自転車競技未経験ながらガールズケイリン挑戦を決めた。

「陸上競技で限界を感じていた大学生の時、後に兄弟子になる(競輪選手の)小坂丈さん(茨城)と出会い、競輪を知りました。固定自転車に乗ったら数字が良かった。陸上の投てき競技から転向して競輪で活躍する野口裕史さん(千葉、ハンマー投げ元日本王者)のことも知って、やってみたいと思いました」と転向の経緯を話す。

 

ガールズケイリンに興味を持った彼女の心をさらに動かしたのはガールズのトップレーサー・奥井迪(東京)がレースで見せた圧倒的な先行(先頭を走り逃げ切りを狙う戦法)だ。

「平塚ガールズグランプリ(17年)の動画を見てカッコいいなと。養成所に入ってからは小論文で先行について書いたし、競走訓練でも着順より先行することを意識して走りました」。

奥井も半田と同じく自転車競技未経験からの選手挑戦。先行にこだわり続けてトップまで上り詰めた人気選手だ。

 

円盤投げから競輪選手に転身した半田水晶

 

3月の卒業記念レースでも結果より内容にこだわった。決勝は激しい先行争いの末に6着となったが、周囲に与えたインパクトは大きかった。

「デビューしてからは逃げて車券に貢献する選手になりたい。(日本競輪選手養成所の)滝沢正光所長(当時)からは「先行にこだわれ。先行しかできないと思って走ると覇気が出る」って声をかけてもらえた。神山(雄一郎)新所長からも卒業記念レースの後に「いいレースだった」と言ってもらえた。先行で気持ちが折れる時が来るかもしれないけど、頑張っていきたい」と意気込みを話す。

 

デビュー戦(5月2~4日)はゴール前の直線が長く先行選手泣かせの熊本競輪場だが、ひるむことは全くない。

「駆け引きがあり、逃げ切ることは難しいと思うけど、先行で頑張りたい。目標は奥井さん。ビッグレースで活躍しているし、ああなりたい。いつかは奥井さんを越えられるように」と、ぶれない気持ちで厳しい道のりへ踏み出す。

(松本 直)

 

土井慎二

野球でエリート街道を歩んできた土井が競輪選手として新たな一歩を踏み出す。

中学時代から全国の舞台を経験。岡山の強豪・関西高に進学すると1年秋から4番を任され、明治神宮野球大会(高校の部)で準V。翌年3月に行われたセンバツに出場。3年夏には3番・右翼で甲子園の土を踏んだ。

立正大に進学後も4年秋に明治神宮大会で全国制覇と華々しい経歴を持つ。

 

競輪の世界でも輝きを放ちたい土井慎二

 

競輪挑戦のきっかけは現役の競輪選手でもある父・土井勲の存在だ。

「大学最後の神宮大会で膝のケガをしてしまった」と挫折を味わいプロの道を断念。社会人でも軟式で野球を続けていたが「刺激がなくなってしまった」と目標を失いかけた。

その時に、たまたま父が走る大宮競輪場に行き「年齢を重ねてもプロスポーツ選手として走っている父のようになりたい」と決心。やはり根っからのアスリートだ。

 

そこから4回の試験を経て養成所に合格。「課題はまだ多い」と話すが「お客さんの前で走って、見られている感覚というか、野球をしていた時の興奮を思い出した」と大舞台を知っているからこそのメンタルの強さ。「まずはA級1、2班(下から2番目のクラス)に昇格」と堅実な目標を立てたが、いずれは超満員の中で走る選手になってくれるはずだ。

(斎藤 諒)

 

半田水晶 プロフィール

半田水晶(はんだ・みずき)1997年10月14日生まれ、27歳。群馬県太田市出身。筑波大大学院修了。

167センチ、72キロ。

中学1年生から陸上競技を始め、円盤投げで日本選手権5位になるなど好成績を収めた。

一般企業に就職も体を動かして勝負したい気持ちが勝り、128期の適性入学試験を受験。

第3回記録会では成績優秀者に与えられるゴールデンキャップを獲得。卒業記念レースは23【6】着。在所成績は4位。

師匠は芦沢大輔。

 

土井慎二 プロフィール

土井慎二(どい・しんじ)1996年11月15日生まれ、28歳。岡山県倉敷市出身。立正大卒。

182センチ、88キロ。

2024年5月に127期として日本競輪選手養成所に入所。成績は1着9回、2着9回、3着8回、着外37回で在所成績は27位。

脚質はダッシュ。師匠は父の土井勲(82期)。

5月16日から平競輪で行われるルーキーシリーズでデビュー予定。

 

その他新人

男子の127期は過去最強の〝銀河系軍団〟になり得る可能性を秘める。

成績優秀で早期卒業を果たして1月にデビューを果たしている市田龍生都(福井)がスター候補筆頭だが、卒記チャンプでナショナルチームに所属する三神達矢(福島)や在所1位の尾野翔一(福岡)、さらに尊敬する選手を競りの名手・宗景祐樹(栃木)と話す椎名俊介(茨城)は実績向きのセンスが光る。

 

ガールズの128期は酒井亜樹(大阪)が別格の存在。ナショナルチームに所属してアジア選手権のチームスプリントで銅メダルを獲得した実力者だ。

その酒井を倒して養成所チャンプに輝いた岩元杏奈(宮崎)も力は十分。高校時代から活躍が光る北岡マリア(石川)も楽しみな選手。先行力ある岡田優歩(和歌山)の父は元選手の篤さん。さらに現役S級選手の北津留翼(福岡)を父に持つ北津留千羽(福岡)や柔道から転向した高崎千賀(神奈川)など個性豊かだ。

 

記者の目

卒業記念レースを取材するのは125・126期に続き2回目。この中から競輪界を引っ張っていく選手も居れば、苦しも選手も居る。それはプロスポーツの世界だから仕方のないことだ。しかし、それを差し引いても127期はみんな活躍していくのではないかと期待が持てる。

もちろん目に見える数字としてゴールデンキャップの数が過去最多の27人が獲得したこともあるが、それ以上に候補生それぞれに雰囲気を感じた。歴代最高の期になる可能性を秘めていそうだ。

128期のガールズは卒業記念レースの結果だけを見れば混戦模様。しかしナショナルチーム所属の候補生も居るだけに裏を返せば、全体のレベルが高いのかもしれない。

現状ガールズケイリンは力の差は大きい。全体的な底上げをしてくれそうな予感がする。

 

◆ルーキーシリーズ 3月に日本競輪選手養成所を卒業した新人選手同士が対戦。養成所で一年間鍛え上げた脚力に加えて、顔と名前をいち早く知ってもらうことを目的にして2020年に新設。

今年は熊本、別府、いわき平、四日市、玉野の5場で実施される。

 

    この記事が気に入ったら
    いいね! してね。

    その他のスペシャル

      おすすめの記事