【夕刊フジ】小倉で今年最後のGⅠ「競輪祭」18日開幕

2021.11.18

夕刊フジ 2021年11月16日発行号

 

 

小倉で今年最後のGⅠ「競輪祭」18日開幕

“競輪発祥の地小倉”プライド胸に改革は番手ではなく先行勝負

 

 

今年最後のGⅠである「第63回競輪祭」が18日から6日間、福岡県北九州市の小倉競輪場(北九州メディアドーム)でナイター開催される。

 

競輪発祥の地である小倉競輪を主催する北九州市公営競技局・上野孝司局長に小倉競輪の今までとこれからを語ってもらった。

 

上野局長

 

 

北九州市は日本で唯一、競輪(小倉)とボートレース(若松)を主催する自治体である。

 

上野局長は1996年に北九州市の人事異動で競輪、ボートレースを担当する産業経済局事業部に係長として配属され、主にボートレース若松を担当してきた。

 

2012年に事業部長となり競輪も担当することになり、17年には理事に。

 

18年には企業会計原則が適用される地方公営企業として設立された、北九州市公営競技局の初代局長に就任。

 

小倉競輪だけではなく、ボートレース若松の管理者として辣腕(らつわん)をふるっている。

 

 

競輪発祥の地として、競輪界に数々の功績を残してきた小倉競輪。

2011年1月には、全国に先駆けてミッドナイト競輪をスタートさせた。

 

「JKAがミッドナイトをやりたいと小倉に持ち掛けたときは、私は小倉競輪は担当ではなかったのですが、当時の下重(暁子)会長が北九州市長にお願いしたと聞いています」。

 

当時、売り上げの低迷に悩んでいた競輪界にとっては、起死回生を狙った新施策で、「無観客」「7車立て」「車券はインターネット投票のみ」「21時以降の車券発売」「7レース制」(現在は9R制)など、競輪界にとって〝第二の創業〟と言っても過言ではない、挑戦だった。

 

 

そこで全天候型のドーム場の小倉に白羽の矢が立ったが、当初、開催場は小倉のみで、1日あたりの売り上げも損益分岐点である6000万円程度だった。

 

「売り上げを増やすためにはミッドナイト競輪というものをやっているということを認知してもらう必要がある。他場でもやって毎週とか開催を増やすことがまず必要」(上野局長)だったが、全国の競輪場の多くは屋外で、地域住民の理解が得られにくい。

 

しかも当時は9車立てが普通だったので「7車立てなんか競輪じゃない」など尻込みするばかりだったという。

 

 

そして2011年3月11日に東日本大震災が発生。

震災では多くの競輪場も影響を受け、施設が壊れて本場開催ができなくなる競輪場も発生した。

 

緊急避難的措置として他場を借りてレースをする『借り上げ開催』が行われたが、上野局長は「小倉バンクを貸して他の施行者にミッドナイトをやってもらえばいい。そうすれば住民の説得とかしなくてもできるんだから」と発想を転換。

 

現・競輪事業課長の手塚秀雄氏とともに交流のある全国の施行者に声をかける日々が続いたという。

そのかいもあり、手を挙げる施行者が徐々に増えていったという。

 

 

これにより、ミッドナイトの認知度は売り上げともにアップ。

 

今では地元ではミッドナイトが開催できない施行者が他場を借り上げて開催するのが一般的となり、ほぼ毎日どこかでミッドナイトが開催されている。

 

赤字になることもある昼間開催のFⅡをミッドナイトで開催することで収益性が高まり、苦しかった施行者の収支も黒字に転換。

売り上げ低迷場の経営状態の改善に至った。

 

そして現在では競輪界のドル箱コンテンツに成長し、開催場は25場まで増えた。

 

 

18日から行われるGⅠ「競輪祭」は、競輪発祥地の小倉競輪場で第1回大会からすべて開催されている。

 

18年からは低迷するビッグレースの売り上げ向上の起爆剤としてGⅠレースとしては初となるナイター開催となり、従来の4日制からガールズケイリンも加わった6日制に生まれ変わった。

 

「GⅠを毎年、固定場でやっているのは今は小倉だけ。

もちろんプライドもあるが、43分の1ではなくそれ以上の責任を業界に対して背負っている。

また小倉は競輪発祥の地としての責任もあるため、(メディアドームの建設で)300億円の負債を抱えても競輪祭を開催してきた。

今は黒字になったがこれからも競輪業界全体の底上げを図り、その中で北九州市も売り上げが上がることを願っています」と上野局長は語気を強めた。

 

 

ボートレース畑の長い上野局長から見て競輪というコンテンツはまだまだ伸びしろがあると言う。

 

「競輪グランプリは昨年、1レースで約56億円を売り上げた。

ボートのグランプリは約34億円。

総売り上げはボートのほうが断然上だが、1レースでそれだけを売り上げる競輪には底力がある」。

 

 

競輪場は全国で43場だがボートレース場は24場しかない。

 

「競輪は場が多すぎるからダメという人がいるがそうじゃない。

例えば一宮競輪が廃止になったが、それで近隣の名古屋、岐阜、大垣の売り上げが上がってはいない。

競輪より後に誕生したボートレースは先を行く競輪を目標に場が少ないから広域発売、場間場外などに先に目を向けてきた結果が今にある」。

 

 

上野局長は今後、競輪でも多くの場間場外を展開できるように働きかけ、競輪の発展にも力を入れる。

 

 

 

小倉競輪の社会貢献

小倉競輪の収益は、北九州市が発足した1963年以降だけでも約500憶円を繰り入れ、市の財政に寄与してきた。

 

1998年には旧小倉競輪場横に「北九州メディアドーム」という全天候型の複合施設が建設され、今の小倉競輪は同所で開催されている。

 

約1万8000人の収容力があり、北九州市の成人式などのイベントが行われるほか、コンサートホール並みの音響性能を生かしてコンサートの会場としても利用されている。

 

また、イベント時の控室は普段、会議室として貸し出されるなど、幅広く活用されている。

 

総工費は約300億円だったが競輪の売り上げで賄われている。

 

 

一昨年からは、地元のNPO法人と協力し、近隣の小学生などを対象とした子ども食堂「どーむきっちん」をスタート。

 

月に1度のペースでドーム内での運動と食事を組み合わせたプログラムを実施している。

 

最近では、新型コロナウイルスのワクチン接種会場として全国に先駆けて大規模接種会場として使用された。

 

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