【夕刊フジ】取手競輪GⅠ「第37回全日本選抜競輪」20日開幕
2022.02.19
夕刊フジ 2022年2月19日発行号
取手競輪GⅠ「第37回全日本選抜競輪」20日開幕
茨城県自転車競技事務所・角田所長がコロナに挑む
今年最初の競輪界のビッグレース「第37回全日本選抜競輪」(GⅠ)が20日から23日までの4日間、茨城県取手市の取手競輪場で開催される。
同所で同大会が開催されるのは2017年第32回大会以来5年ぶり2回目。
茨城県自転車競技事務所・角田浩美所長に大会直前の意気込み、取手競輪の今後などを直撃した。
角田所長
時代はコロナ禍。
公営競技の中でも参加人数が多い競輪は新型コロナウイルス感染者の発生により中止、打ち切りが目立つ。
今大会では徹底した感染対策を施す。
選手宿舎は通常4人一部屋だが今はソーシャルディスタンスを保つために2人で使用。
宿舎に入りきれない選手は借り上げたホテルの個室を使う。
また、取手競輪では2020年6月の開催から検車場に報道陣は一切入れず、屋外での取材対応としている。
「取手さんは厳しすぎるんじゃないのって言われます」。
無事に開催したいという強い気持ちで心を鬼にして感染予防に徹している。
競輪のビッグレース(GP・GⅠ・GⅡ)は年間で10開催しかなく、中でもGⅠが開催できる競輪場は僅かだ。
GⅠが開催できる取手は順風満帆に見えるが、11年3月の東日本大震災ではバックスタンドのガラスや天井が落下し、バンクもひび割れて、存続が危ぶまれるほどの被害が発生していた。
取手競輪は茨城県が主催しており角田所長は震災当時、県庁で報道対応のセクションに所属。
「あの時は4日間、家に帰れなかった記憶があります」と振り返る。
原発事故の影響で福島県から多くの避難者が茨城県に押し寄せ、「茨城県では受け入れるためにホテルなどの手配もしました。競輪場内の選手宿舎でも受け入れたと聞いています」。
当時の産経新聞によると取手市は、災害時相互応援協定を結んでいる南相馬市から避難者を受け入れ、ピーク時には54世帯171人が市内に避難していたという。
甚大な影響を受けた取手競輪場は、近隣の松戸競輪場を借りてGⅢ、FⅠをそれぞれ一開催ずつ行うことになったが、関係者の努力に加え、ホームスタンドが老朽化していたため、バックスタンドと入れ替える改修工事の最中だったこともあり、12年10月には本場での開催を再開。
翌年、新メインスタンドが完成し、9月にリニューアルオープンすることができた。
その後、17年には取手では初となるGⅠレース「全日本選抜競輪」を開催し、2回目となる今回の売り上げ目標は「90億円」。
本場では事前抽選で当選した人のみとはいえ観客を受け入れる。
「まん防が出たときを想定してギリギリの人数、2400人に設定しました」。
応募は約4100人あったという。
残念ながら場内で予定されていた茨城県にゆかりのある人気芸能人のトークショー、レース予想会、開会式&表彰式は人が集まりすぎることを懸念して断腸の思いですべて中止にした。
「優勝者はもちろん、勝利者インタビューはちゃんとやりますので映像でごらんください」
今大会で注目されるのは、茨城県勢としては武田豊樹(88期)以来のタイトルホルダーとなった吉田拓矢(107期)だ。
「昨年、競輪祭を優勝した後、特別表彰するからって事務所に来てもらったんです。その時にグランプリは平原選手が勝ってもいいから、全日本は吉田選手が優勝してほしいってお願いしましたよ」。
吉田からは「わかりました」と笑顔とともに力強い? 返事をもらえた。
現在は拓矢(次男)を筆頭に昌司(三男・111期)、有希(四男・119期)と「吉田ブラザーズ」が輪界を席巻している。
栃木・宇都宮競輪場で3月に行われるGⅡウィナーズカップ(3月18~21日)には拓矢、有希の2人が出場するため「うらやましい」と本音ももれる。
吉田ブラザーズがそろって地元のビッグレースに出場できるように、将来的には「全日本選抜といえば取手」と世間から言われるように「3~5年に一度は同大会を誘致したい」と考えている。
また、輪界のドル箱でもあるミッドナイト競輪開催も目指している。
現在はモーニングも開催しているが「打鐘は一発だけ大きく打って後は控えめに鳴らす」などの近隣への音の配慮をかかさない。
ミッドナイトは音に加えて光の問題もあり「光漏れの対策をしっかりして近隣住民の理解を得て開催したい」
茨城県は昨年、都道府県魅力度ランキングで2年ぶりに最下位の47位も「都心から近すぎて日帰りできるから魅力をあまり感じないんでしょう、茨城県は観光名所もたくさんあっていいところですよ」と角田所長は意に介さない。
そんな「のびしろ日本一」の茨城県の取手競輪場はモーニングからミッドナイトまで、そして定期的に行われるビッグレースが楽しめるエネルギッシュな競輪場を目指す。
取手競輪場では、取手市にキャンパスを置く東京芸術大学と協力し〝芸術が身近に感じられる競輪場〟を創出し、若者や女性など幅広い人々の来場を促す「サイクルアートプロジェクト」を展開しており、アート作品が場内各所に展示されているほか、取手競輪のイメージマークとうさぎをモチーフとしたマスコットキャラクターは、同大デザイン科の長濱雅彦教授が作成した。
毎年11月には、「サイクルアートフェスティバル」を開催し、的中すると景品がもらえる模擬レースやバンクを開放した自転車走行、芸大出身の傍島賢氏によるアートイベントなどを行い、過去には1万数千人を集めたこともある。
「サイクルアートフェスティバルはここ2年、コロナ禍で中止したので今年はぜひ開催したいです」。
非売品のマスコット人形は競輪競走と同じく全9種類。
特にガールズ選手から大人気で「9体そろいで欲しい」とよくお願いされるという。
さらに取手競輪は、地元との密着だけではなく財政面でも地域に貢献。
特定財源ではないため、具体的に何かに特化して使用されているということはないが、令和2年度までで636億円が茨城県の一般財政に繰り入れられている。
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