【夕刊フジ】地域と共生する取手競輪 茨城県自転車競技事務所の山本辰夫所長に聞く

2024.03.19

夕刊フジ 3月19日発行号掲載

 

取手競輪場(茨城県取手市)で「第8回ウィナーズカップ」(GⅡ・令和6年能登半島地震復興支援競輪)が21日から24日の4日間の日程で開催される。

開催を目前に控えた県自転車競技事務所・山本辰夫所長が大会への思い、取手競輪と地域のつながりなどを語ってくれた。

 

山本辰夫所長

 

山本所長は2022年4月に同職に就任。17-19年度の3年間は次長として事務所に在籍していたが、この間にビッグレースの開催はなかった。

そこで自身初体験となるビッグレースをPRしようと「競輪のユニホームを着てマラソン大会に出よう」と自らウィナーズカップ開催告知のTシャツを作り、それを着用して2月11日の守谷ハーフマラソン、18日の石岡つくばねハーフマラソンに参加した。

「Tシャツを見た方から『競輪の大会があるんですか?』ってけっこう、声をかけてもらえたのでいい宣伝ができました」と話す。

元々、趣味の登山のトレーニングで競輪場周辺をよく走りこんでいたそうだ。

 

21日から行われるウィナーズカップのキャッチコピーは〝メロン王国いばらき、春の大一番〟。

ポスターの真ん中にはメロンが鎮座し、周囲を取手競輪のマスコットキャラクターたちが取り囲んでいる。

「取手競輪は全国でも数少ない、県営の競輪場です。

全国のお客さまが注目するビッグレースなのでせっかくなら茨城県のPRをしようと。

これから旬を迎えるメロンを中心にデザインしました。

茨城県は24年連続でメロンの出荷量日本一ですが、それはあまり知られてないんですよ」と訴える。

茨城はメロンのチャンピオン(王国)、そしてチャンピオンを夢見る選手たちの思いが表現されている。

メロンを取り囲むうさぎをモチーフとした9人の〝砦の森の住人達〟もこれまではカントやボスらが主役級だったが、今回は弟弟子であるチェーンを前面に押し出し、取手競輪の選手層の厚さや若手の台頭を伝え、現在の取手をけん引する吉田兄弟もイメージさせている。

 

取手市は東京藝術大学取手キャンパスと連携し、1999年から「取手アートプロジェクト」を行っており〝アートのまち〟の顔も持つ。

競輪場でもサイクルアートプロジェクトが行われ、芸術が身近に感じられる競輪場を目指している。

マスコットキャラクターのデザインは東京藝大デザイン科の長濱雅彦教授によるものだ。

 

「長濱教授は競輪が好きで本場開催のときはよく観戦にいらしてくださいます。

そんな教授だからこそメロンのチャンピオンと今大会のチャンピオンを目指すうさぎの競輪選手たちというコンセプトを考えてくださったんですね」

 

取手競輪は1950年の開設以来、健全な経営を続けている。

「毎年、収益を県の一般財源に繰り入れていますが、普通の税金と一緒にいろんなことに使われて、目には見えなくなってしまいます。

せっかくなので何か自転車に関するものに使いたいので自転車、競輪の魅力を伝えるような事業で使えるよう予算化しています」

 

 

取手競輪場で行われる「サイクルアートフェスティバル」は取手市民にはおなじみのイベントで2005年から実施されている。

「取手はアートのまちなので競輪場も自転車とアートのコラボでPRしようということで始まりました。毎年、1万人ぐらい来場していただいています」

 

同イベントでは現役競輪選手による模擬レースをはじめ、バンク試走&ウォーク体験会、アート&クラフトマーケット、謎解きゲームなどが行われ、大いににぎわう。

また、地域との共存を目的に施設の無料開放や子供自転車乗り方教室、周辺のクリーン作戦も行う。

今年度からは近隣の現在改築中で運動場、体育館などが使用できない取手市立白山小学校の児童に競輪場を体育の授業場所として提供している。

「授業の一環としてマラソン大会もバンクで行ったんです。保護者の方々が観覧席で応援することができて、非常に喜ばれました」

競輪場には児童からお礼の手紙、色紙が届いたという。

 

「競輪場はまだまだ、ギャンブル場というイメージがありますけど、こういうことでお子さんやそのご父母の方から理解を得られるといいですね。

すごく近くにお住まいでも競輪場には1回も入ったことがなかったという方が『こんないいところだったんだ』って喜んでくれました」

 

また、中学校(取手市、守谷市)の社会体験授業の一環として職場体験も行われた。

「競輪場はいろいろな人が働いています。清掃やお客さまの案内など、2日間でいろんな職種を体験してもらいました。

せっかくだからと自転車でのバンク走行やローラー体験もしてもらいました」

 

 

県内の他のスポーツ競技との連係も進めている。

バスケットボールBリーグの「茨城ロボッツ」とは、3月6日に「RakutenKドリームス Bank Toride presents LUCKY WEDNESDAY GAME」として、協賛試合を茨城ロボッツの本拠地であるアダストリアみとアリーナで開催した。

 

 

当日はウィナーズカップ参戦予定の吉田有希とガールズケイリンの岩崎ゆみこ、戸田瑞姫の3人が来場。

フリースローチャレンジでは東京医療保健大時代に全日本大学バスケットボール選手権で優勝の実績がある岩崎が見事なシュートを決め、会場を沸かせた。

また、ワットバイクチャレンジでは鍛え上げられた太ももで高記録を叩き出し、競輪選手のケタ違いの脚力も披露した。

 

 

来場者には先着でマスコットキャラクターのバンクくんのぬいぐるみ、ウィナーズカップのクリアファイルも配布され、今大会のPRも行われた。

「協賛試合は今回初めてだったんですが、スポーツとしての競輪をPRするには格好の機会でしたね。

今年はオリンピックもあって、そこで競輪選手が活躍してくれると思うので、スポーツとしての自転車競技も注目されるでしょう。

競輪は自転車競技、スポーツだと認識してもらえるとさらにイメージアップにつながりますね」と山本所長。

 

県内にはサッカーJリーグの鹿島アントラーズや水戸ホーリーホック、プロ野球BCリーグの茨城アストロプラネッツなどいろいろなチームがあるが、27年には守谷市に東京ヤクルトスワローズの2軍も移転してくる。

 

「競輪のPRをしてもらうというのはもちろん、逆にあちらの選手に競輪場に来てもらって、ワットバイクやバンク走行にチャレンジしてもらってメディアに取材してもらうのもいいですね。

競輪選手は岩崎さんだけじゃなく、他競技からの転向組が多いのでそういうところでもつながっていければと考えています。

サイクルアートフェスでブースを出してもらってチーム、競技を宣伝するっていうのもいいですね」と話す山本所長。取手競輪は今後も地域社会との共生を図っていく。

 

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