【夕刊フジ】〝ABEMA湘南バンク〟初のナイタービッグレースは観客歓喜の秘策満載 平塚市公営事業部・木川大成部長に聞く

2024.08.13

夕刊フジ 8月10日発行号掲載

 

今年も〝ABEMA湘南バンク〟でビッグレースが開催される。「第67回オールスター競輪」(GⅠ・大阪・関西万博協賛)は神奈川県平塚市の平塚競輪場で13日から18日の6日間、ナイターで行われる。

KEIRINグランプリ、日本選手権などビッグレースを実施することが多い平塚だが意外にもナイターのグレードレースは初となる。その記念すべき大会は観客を喜ばせるための〝秘策〟が満載だ。平塚市公営事業部・木川大成部長に話を聞いた。

 

平塚市公営事業部・木川大成部長

 

 

<初開催のナイターグレードレース>

「ビッグレースは多く開催していますし、ナイターも1999年に函館競輪場の次に全国2番目の早さで実施しています。しかし、グレードレースでのナイター開催は実はGⅢもやっていなくて今回が初めてです」と木川部長は語る。

オールスターは6日間の長丁場。開催にあたり、施設面も整備し、競輪ファンはもちろん、老若男女問わず誰もがいつでも楽しめるようなイベントなどが用意されている。

 

まずは競輪場の顔でもある正門を「オシャレな西海岸風」に大幅にリニューアル。日が落ちるとライトアップで優雅な雰囲気を醸し出し、海水浴、サーフィン、海釣りなどビーチを楽しむアクティビティが豊富な湘南のロケーションに溶け込む仕上がりに生まれ変わった。

ナイター開催を彩る「光と噴水と音」によるショータイムには敢闘門イルミネーションも加わり、パワーアップした。レース間にはライトとスイング噴水がサザンオールスターズなどの有名アーティストのヒット曲に乗ってショータイムを展開、50パターンを超える演出で見る人を飽きさせない。選手入場は敢闘門からムービングライトとストロボライトで選手を照らし、華やかに仕上げられ必見。

オールスター期間中は、マーク・パンサー(15日)、DJ RYO×SEPTENI RAPTURES(18日)が登場し、DJパフォーマンスやダンスで演出に花を添える。

 

ライトアップされた平塚競輪場のバンク

 

 

<オリジナルクラフトビールを販売>

平塚競輪場は全国で最初に酒類販売を開始した。今回は平塚市内でクラフトビールを製造している「イグドラジル ブルーイング」とコラボし、オリジナルである平塚産ホップとぶどうを使用した「平塚オールスター競輪ビール」と平塚産ホップのみ使用の「平塚競輪ビール」が限定販売される。平塚産ホップは平塚競輪場職員が手触り、匂いを確かめながら収穫したというこだわりようだ。

 

平塚競輪オリジナルクラフトビール

 

平塚市内にある「いつか珈琲屋」と手を組み、オールスター競輪をイメージした深みのあるリッチな味わいのドリップパックも制作。こちらは開催期間中、特別観覧席利用者にプレゼントされる。

 

イベントは五輪イヤーにふさわしく柔道家で金メダリストの野村忠宏氏のトークショー(15日)がある。くしくも五輪2大会金メダル獲得の阿部一二三(パーク24)から挑戦状をたたきつけられたと発言して話題になったばかりで盛り上がること必至だ。

その他、平塚競輪イメージキャラクターの篠崎愛トークショー(18日)、ぼる塾お笑いステージ(13日)など有名どころがめじろ押しで「平塚競輪場は今年7月1日より条例改正で入場が無料になりました」(木川部長)と豪華イベントが無料で楽しめる。

 

玄人競輪ファン向けには「1993年オールスター競輪決勝・神奈川カルテットライントークショー」(17日)と「松本整、村上義弘レジェンドトークショー」(18日)がイチ押しだ。

「今年6月、高松宮記念杯決勝で神奈川勢3人が連係して、北井佑季、和田真久留がワンツーを決めたばかり。今回も地元から多くの選手が決勝に乗ってほしいというエールの意味で準決勝直前に旧神奈川勢のトークショーを配置しました。現在の日本競輪選手会神奈川支部の高木隆弘支部長と引退した出口真浩さん、佐々木龍也さん、山田英伸さんの法政二高ラインで挑んだ宇都宮オールスターの決勝。地元の神山雄一郎選手が特別競輪初制覇した伝説の一戦を振り返ります。

また、1992年名古屋で特別初制覇、2002年熊本で優勝の松本整さん、翌03年に一宮でそれぞれオールスターを優勝した京都のレジェンドも登場します」と木川部長も力が入るイベントだ。

 

 

<積極的にビッグレースを招致する狙いは?>

平塚競輪場では2022年に「KEIRINグランプリ2022」、昨年は「第77回日本選手権競輪」(GⅠ)、そして今年はオールスター競輪を開催する。

「ビッグレースを開催すれば当然、収益が上がり、市の財政に貢献することができます。競輪ファンのお客さまにもスター選手の走りをお見せすることができて『平塚競輪場はいつもビッグレースを開催していてうれしい』という地元の方からのお声もいただいています」と木川部長まずは前置きする。

競輪は収益を上げることが一丁目一番地。昨年度、今年度ともに約5億円を市の財政に繰り入れ、さらに近い将来への修繕費の積立金も30億円を超えている。

ビッグレースを開催するためには希望するレースを開催するにあたりどのようなことをやるかという企画書を申請する。「平塚競輪場では多方面に力を入れていろいろ企画をやっているのでそれが評価されて毎年、開催ができていると思います。売り上げ、入場者数とも日本1、2を争っているので平塚でビッグレースをやれば売り上げも上がるとも自負しています」

 

2023年「日本選手権」決勝

 

木川部長は過去に同部に在籍していた際にオールスター(1997年)、グランプリ(2001年)、日本選手権(03年)と約3年に1回のビッグレースを経験している。「あれは貴重な経験でした。ダメ元でグランプリの前夜祭に長嶋茂雄さんに来てほしいとお願いしたら、本当に来ていただけたりもしました」と当たって砕けろのチャレンジ精神で金星もゲットしてきた。

また木川部長はビッグレースを開催することが通常開催にも生かされていると感じている。「職員も大きいレースを経験していれば、通常の開催でも同様のサービスやイベントなどを効率的に落とし込んでやることができます。職員にとってもスキルを上げる場になっています。私もですが役所は若いときに在籍した部署に戻ってくることが結構多いので、将来的にも役に立ちます」。平塚ではいつでもビッグレースが開催できる地盤が固められている。

 

今大会はさらに大きな話題がある。パリ五輪に出場する小原佑太(青森)、太田海也(岡山)、窪木一茂(福島)の男子3選手と太田りゆ(埼玉)、佐藤水菜(神奈川)のガールズ2選手の計5人が弾丸日程で参戦する予定だ。「五輪出場のアスリートと日本の競輪選手が激突、で注目度が高まってくれるでしょう」

 

 

<これからも進化する平塚競輪場>

現在、平塚競輪場は本場開催、場外発売合わせて年間約220日、稼働している。「売り上げの基本は本場開催で場外で収益を上げようとは考えていません。しかし、場外発売も現在はメインスタンドまで開放していて経費はかかるので赤字になっては本末転倒です。将来的には正門を入ってすぐの場所をリニューアルしてコンパクトな販売所を作り、場外はそのスペースで対応できるように考えています」

また老朽化したバックスタンドを取り壊し、跡地に選手宿舎、管理棟を建設する計画もある。

「バックスタンドは耐震性の問題もあり、現在使用していません。ここに新しい選手施設を建設すれば、現在の選手施設を利用しながら工事ができるので開催を休止する必要もなく効率的です。選手宿舎も普通開催なら個室対応ができる部屋数にし、またガールズ専用の施設ももちろん計画しています」

ビッグレース開催で得た資金を設備投資に回し、選手も観客も快適に過ごせる施設を目指す。

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