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<後編>今年初優勝の田中月菜 自力を繰り出しゴールを決める! 【松本直のガールズケイリンちょっとイイ話】

特別企画 2023.07.26



“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。




前編はコチラ



日本競輪選手養成所卒業後は地元佐賀に戻り、武雄競輪場で練習に励んだ。

デビューは2020年5月広島のルーキーシリーズ。

予選2走を4、2着でクリアして決勝進出。

決勝は6着(優勝は永塚祐子)。


初白星は4場所目の7月玉野の最終日一般戦。

宮安利紗のまくりに乗って差し、初の1着をゲットした。


「デビューの年はあまり覚えていません。

養成所では地元の先輩から『先行してこい』って送り出されていたので、逃げにこだわって走っていたけど、ルーキーシリーズは何もできなかった。

本格デビューしてからも周りの様子をうかがいながら走っていた。

自分らしさを出すことなく走っていたので、開催後はもどかしさがありました」と振り返る。


(写真左から)同期の保立沙織小笠原光、田中


デビュー2年目の2021年は追い込み、マークに寄せた戦い方を選択した。

位置取り重視のレースにすると成績は安定したが、4月小倉、5月前橋で失格。

決勝に進んだとしてもモヤモヤした気持ちだけが残っていた。


3年目の2022年は少しずつ自力を出すレースにシフトチェンジ。

5月の豊橋、高松と予選でまくりを出して1着をゲット。

7月平塚のガールズケイリン10周年記念『ALL GIRL’S 10th Anniversary』でも負け戦ながらまくりで白星。


『ALL GIRL’S 10th Anniversary』で118期の同期と


少しずつ上昇気流に乗り始めた矢先にアクシデントが起きてしまった。

8月の小倉で落車。人生初の鎖骨骨折をしてしまった。


「鎖骨骨折は痛かったですね。

すぐに手術をしましたが、鎖骨も痛かったけど心も痛かった。

同期の活躍も目に入ってくるし、何をやっているんだろうって気持ちになりました」


デビュー4年目の2023年は転機の1年となる。

メインの練習場所だった武雄競輪場がバンク改修をしていることもあり、練習環境を求めて久留米競輪場へ出稽古することを決意した。


「以前からセッティングを見てもらっていた藤田剣次さんがいるし、ガールズケイリンの強い選手が多いので久留米で練習することにしました。

練習はすごくキツいけど、いい環境でやれています。

(藤田)剣次さんからは『マーク戦じゃなくて自力で戦えるよ。(競走得点で)53点は持てる選手だよ』って言ってもらって自信になりました。

何人ものガールズケイリン選手を見ている剣次さんに言ってもらえたなら、やるしかないって気持ちになる。

それまではレースで弱気になることが多かったけど、久留米で練習するようになり気持ちが変わった。

どうせ大きい着を取るなら、動かないで取るよりも、動いて行ってダメなほうがマシ。

気持ちが前向きになりました」


(写真左から)児玉碧衣、田中、奥井迪尾方真生橋本佳耶


6月の地元武雄では3日間主導権を握り積極策をアピールした。

攻めるレースの集大成は6月の松戸で形となった。


予選1は最終バックでまくりを繰り出し3着。

予選2は打鐘過ぎからカマシ先行で主導権。

山口真未にまくられて3着も、内容◎。


決勝は篠崎新純廣木まこの3番手を確保。

最終3コーナーからまくり気味に踏み込んで、1着。

デビューから3年と1カ月と1日で初優勝を手にした。

同期118期、13人目の達成となった。


「同期同学年で同じ適性出身の中村美那が6月初めの宇都宮で初優勝した。

美那が優勝したし、自分も勝ちたいと思って松戸の決勝は臨んだ。

あとは同じ日程で開催していたGⅠのパールカップからも刺激をもらった。

パールカップの決勝は練習を一緒にする(児玉)碧衣さんが積極的なレースをしていたのも見て刺激になりました。

初優勝はいろんな人に『おめでとう』って言ってもらえて本当にうれしかったです」


(写真左から)同期の永塚祐子、田中、中村美那


今は練習メインの生活だが、不満は全くない。

「練習に行くことが苦じゃないんです。練習場の仲間との雰囲気が好きなんです。

もちろんオフは作りますよ。高校時代のバスケ部の仲間と温泉にいったり美味しいものを食べたりしてリフレッシュはしています」



初優勝は通過点。

満足することはなく今年の後半戦に臨む。


「10月松戸のGⅠ・オールガールズクラシックは賞金が足りないので出られないと思う。

でも来年4月のオールガールズクラシックは久留米で開催されるし、出場することを目標にしていきたい。

ただ大きな目標を立ててしまうと達成できないかもしれないから、コツコツ頑張っていきたい。

今は自力を出すことにこだわっていきたい。しっかり動くことで成績を安定させていきたい。

そうすれば自然とGⅠに出られると思うので。

そのために苦しい練習をしているし頑張りたい」


今は抜群の環境で練習に打ち込んでいる。

バスケットボール出身でガールズケイリンの伸びしろはたっぷりある。


自力を繰り出し、ゴールを決める田中月菜の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。



田中月菜 Runa Tanaka



誕生日:2000年10月13日

身長:161.8cm

期別:118期

登録地:佐賀県



松本直 Suguru Matsumoto



誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ(競輪記者歴13年)


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