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<後編>陸上競技、自転車競技で活躍した124期・五味田奈穂 今年後半戦は初の優勝へ!【松本直のガールズケイリンちょっとイイ話】

特別企画 2024.07.19



“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。



■前編はコチラ



五味田奈穂は順天堂大学の大学院で自転車競技を続けながら、自転車競技部のコーチを兼任した。

朝早く起きて、自転車競技部の試合や練習に帯同。学生たちの面倒を見ることは楽しかったが、競技者としてこのままでいいのかなと考える時間も多くなった。


「自転車競技部のお手伝いは楽しかったんですが、自分の選手としての時間があまりとれなくなっていた。

このままでいいのかなって考えている時に、順大陸上競技部の後輩だった塩田日海ちゃんがガールズケイリン選手の試験を受けることになったんです。それで自分の自転車に乗せてあげたり、日海ちゃんと2人で川崎競輪場にレースを見に行ったりしました。

同じタイミングでチームスプリントのコンビを組んでいた野寺楓ちゃんも122期で日本競輪選手養成所の試験を受けることになり、ガールズケイリンが身近になった。

中学校の同級生だったバレーボール部の青木美保ちゃんもガールズケイリンで活躍しているのもわかっていたので、自分も目指してみようかなって思いました」


124期の同期と。左から高橋美沙紀中瀬由真、五味田


中学の同級生や大学の後輩の挑戦を目の当たりにして、五味田奈穂の競技者としての血が騒ぎ始めた。

大学院2年目の夏の大会で200メートルと500メートルの自己ベストタイムを更新した。


「短距離、伸びしろあるんじゃない?」

そんな自分への期待もあり、ガールズケイリン124期への挑戦が始まった。

試験は1回。落ちたら縁がなかったと決めて、チャレンジ。

アマチュア実績があったこともあり、養成所の試験は難なく突破。124期としてガールズケイリン選手への第一歩を踏み出した。


試験結果発表の日、順大陸上競技部の投てきのコーチに合格したことを伝えにいくと、後に師匠となる野口裕史を紹介された。

野口裕史も順大陸上競技部出身で縁がつながった。


「投てきのコーチが野口さんと同級生で仲が良かった。2日後に野口が来るから会おうよと言われて。初めて野口さんにお会いした時も、自転車のことは教えられないけど、自分でよければって言ってくれて。自分も自転車競技はずっと1人で練習をしてきていたので、野口さんのスタンスがいいなと思った。

お話をしていくうちに野口さんから得られるものがあると思って、お世話になることを決めました」


野口裕史もその時のことをこう振り返る。

「人それぞれ性格がある。五味田ががっつり競輪選手をやりたいんですって感じだったら中村浩士さんを紹介しようと思ったんです。でも話をしていると自分のペースで練習をしたいって感じだった。その感じでいいなら自分が師匠になるのもいいかなと思いました。

自分はガールズケイリンのことはわからない。それでも何か困ったことがあれば聞いてくれればいい。この前の6月の函館で久しぶりに会いましたけど、結果が少しずつ出ているし、このままのペースで頑張ってもらいたいですね」と話してくれた。


師匠の野口裕史と


124期として臨んだ1年間の養成所生活。

思い出に残ることは千葉の大先輩でもある滝澤正光所長が直接指導するT教場だった。


「私、キツい練習が好きなんです。養成所ではキツい練習がしたかった。滝澤所長に指導してもらえる時間もこの1年しかない。貴重な時間だと思い志願しました。今となってはすごくいい時間を過ごすことができました」


T教場の厳しい特訓で競輪選手としてのベースをしっかり作り上げると、在所成績は3位。卒業記念レースでも決勝進出。3位という好結果で養成所生活を終えた。


左から谷元音羽松井優佳、五味田


しかし、もともと強く競輪選手を志望していたわけではなかった五味田奈穂。養成所を卒業すると、軽い燃え尽き症候群のような状態に陥ってしまったそうだ。


「養成所を卒業してから、練習をあまりしていなかったですね。選手としてどうしていきたいのかがわからず、気持ちが抜けていました。それなのに、競輪ルーキーシリーズ2024は養成所の成績や卒業記念レースの結果で人気になっていた。どう走っていいかもわからずデビューしました。

その後もなかなか結果が出なかったけど、焦ってはいなかった。自分は一歩ずつしか上に上がっていけないとわかっていますから。1段飛ばしで階段を駆け上がっていける人ではないので」


競輪選手としてどうしていくのかを模索していく中で、心がけたことは先輩選手と話をすることだった。

7月以降、先輩たちとの対戦の中で先行をしていくと、レース後に先輩選手から声をかけてもらうことがあり、いろいろ話していくことでガールズケイリンに少しずつ慣れていった。


山原さくらさん、梶田舞さん、奥井迪さん、加瀬加奈子さんなど先輩選手たちとお話をさせてもらうことで少しずつ競輪に慣れていきました。先輩選手との関係性ができてから成績も良くなってきたような気がします。

一緒に走る中でガールズケイリンの魅力や自力選手へのリスペクトが増してきました」



今年前半を振り返り「うまくいかないことが多いですね」と話すが、レースを見ていると少しずつだが成長を続けている。


「最初の1年はこんなもんだと、期待し過ぎないようにしています。それでも少しずつ結果もついてきた。5月の小倉では悔しくて泣いてしまったこともあったけど、次の函館ではやりたいレースができるようになってきました」


7月からは後輩の126期も合流。五味田奈穂も選手生活が2年目に突入した。

「126期は強そう。気持ちで負けないようにしたい。自力を出すことは基本だけど、ここからは自力が出せなかった時に冷静に走れるようになりたい。叩かれても次の手が打てる、多様性のある選手になりたい。

1年目は競輪選手に向いていないって思うこともあったけど、何かを一生懸命やることは楽しい」と前を向いている。



今年後半戦の目標は優勝することだ。

「手が届くところまではきている。背伸びして、手をブンと振り上げれば行けると思う。

私の人生は陸上競技も自転車競技も波に乗るまで3年はかかっている。ガールズケイリンでも3年たった時にGⅠに出られる選手になりたい。

今はその前の段階。いろんな経験を積んでいきたい。周りの期待値が低い間にいっぱい失敗をして成長していきたい。最近は悪い着順でも前向きに向き合えている。得るものはあると思います」


ガールズケイリンは年々レベルアップを続けている。いきなり先輩レーサー相手に勝ちまくることは難儀なこと。

陸上競技、自転車競技で時間をかけて結果を出していった五味田奈穂。ガールズケイリンの舞台で輝くのはこれからだ。



五味田奈穂 Nao Itsumida


誕生日:1997年10月14日

身長:165.1cm

期別:124期

登録地:千葉



松本直 Suguru Matsumoto



誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ(競輪記者歴13年)


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