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<後編>ボートレーサー挑戦の挫折を経て競輪へ・伊澤茉那 【松本直のガールズケイリンちょっとイイ話】

特別企画 2024.10.25



“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。



■前編はコチラ



伊澤茉那は日本競輪選手養成所へ2023年春に入所したが、いきなりピンチが訪れた。

適性試験での合格者は自転車に慣れるため、技能試験組より先に集まり練習をする。

その練習は自転車に慣れるための乗り込みがメインだ。


「本格的な運動から離れていたこともあり、体力が落ちていた。適性組の乗り込みで全く付いていけずちぎれていた。悔しくて、悔しくて泣きながら周回練習をしていました。

教官にも『このままじゃ卒業できないぞ』って言われました。でも絶対に見返してやるって気持ちがここで芽生えたのかもしれないですね」



1年間の日本競輪選手養成所生活は在所成績9位。しかしそれ以上に成長できた期間だった。

「有意義な1年間でした。自分の中では1日も無駄にはしなかったと思います。ボートレーサー養成所の時の経験があったから、気持ちや生活に余裕もありました。

ボートレーサー養成所の時は自分のことで精いっぱいになり、気持ちが後ろ向きで全く楽しめなかったけど、経験がある分、日本競輪選手養成所では仲間たちと楽しく過ごすことができたと思います」


同期の磯村光舞と伊澤


5月の平塚から始まったルーキーシリーズ。平塚は7、4、2着。2場所目の函館では決勝進出。3場所目の松山では2日目に落車といろんな経験を積んだ。

「結果以上に得るものがあったルーキーシリーズ3開催だった」


7月の佐世保から本格デビュー。いきなり6、3、6着で決勝進出。続く高松でも2、2、6着で2開催連続の決勝進出。車券になる新人選手として競輪ファンにアピールをした。

9月の小松島でも決勝進出を決めると、同月の松戸では最終日の一般戦で初白星もゲットした。

ほとんどで前からレースを始めて、マーク戦、飛びつきに切り替え、インまくりと多彩な戦法で奮闘している。

レースを走る上でのポリシーは「何もしないで終わることがないように」だ。


「養成所の競走訓練の時から前々のレースは心がけている。何もできないでレースを終えるのが嫌なんです。負けず嫌いの血が騒ぐのでしょうね。何もできないで負けると、悔しくて眠れない。まだまだ走ったレースの数は少ないけど、今は前にいるほうが得意かなと思っています。

隊列の後ろのほうにいると、前の選手が動いてくれるのを待ってしまう。自分が前から始めているほうが積極的なレースができる。前からのレースが通用しなくなるまではこの走り方を中心にやっていきたいです」


同県の先輩と。写真左から伊澤、浦部郁里蓑田真璃


松戸での初勝利は高木佑真マークからゴール前で差し脚を発揮しての1着だった。

「うれしかったけど、自力を出せていないし…。ラッキーだったかなと思います。でも一つ勝てたことはホッとしている。初勝利が地元の松戸だったのもうれしいですね」


ガールズケイリン1年生。競輪人生は始まったばかりだ。

元々は競馬が大好きで馬券、車券を買うお客さんの気持ちがわかっている。

だからこそ1走も無駄な走りはできないと強く思っている。


「松戸で日野未来さんとお話する機会があって、競馬を買いたい熱が上がってきました。競馬の話だけじゃなく、レースのアドバイスもくれました。

自分は児玉碧衣さんや坂口楓華さんみたいに後方から一気の仕掛けができるタイプではないと思う。自分は勝利に貪欲に動くところを見てほしいです。

もちろん車券に絡むことが一番大事。その中でも『伊澤茉那に賭けてよかった』って思ってもらえるようなレースをしたい」



陸上競技をケガで断念。スポーツ選手を支える側を志すも、プレイヤーでありたいと思い、ボートレーサーを目指す。しかし、人生初の挫折を味わい、リスタートの舞台にガールズケイリンを選択した。遠回りはしたが、今は充実した時間を過ごしている。


「無駄なことはなかったと思います。ボートレースもやってよかった。同期の活躍は刺激になる。同期の“水神祭”を見るとうれしくなります。

回り道をしたけど、今はすごく楽しい。レースだからお腹が痛くなるくらい緊張するし、負ければ悔しいけど、一つでもいい着を取れるとガールズケイリンをやっていてよかったと思う。

いずれは大きいレースを目指してみたい。今、126期は仲澤春香が1人で引っ張っているけど、自分も何とかついていって126期が仲澤だけじゃないってところをアピールしたい」


センスあふれる競走で存在感をアピールしていくつもりの伊澤茉那のこれからが楽しみだ。



伊澤茉那 Mana Izawa



誕生日:1997年1月11日

身長:158.0cm

期別:126期

登録地:千葉県


松本直 Suguru Matsumoto



誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ(競輪記者歴13年)


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