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<後編>困難を“ひらり”と乗り越えた先には輝く未来が待っている! 防府の新人・磯村光舞【松本直のガールズケイリンちょっとイイ話】

特別企画 2024.11.22



“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。



■前編はコチラ



磯村光舞(いそむら・ひらり)は、126期として2023年の春、日本競輪選手養成所に入所。念願の寮生活がスタートした。


「とにかく自転車に乗る時間を多くしようと思っていました。適性試験組と技能試験の中で希望者が参加できる事前研修から参加させてもらいました。

126期の適性組は片岡美奈さん、伊澤茉那さん、大浦彩瑛さん、高木萌那ちゃんの4人。あと技能試験組から自分と田野口佳奈ちゃん、仲澤春香さんの7人で入学式の前から研修をしました。

練習が始まってからは滝澤正光所長のT教場に選ばれました。自分にとってT教場の時間がすごく有意義でした。長い時間の乗り込みはキツかったし滝澤所長にバイクで引っ張ってもらう練習もキツかった。

滝澤所長の言葉は自転車経験の少ない自分にはすごく刺さりました。脚力を付けたかったし、競走訓練では先行を意識しました。『サドルから煙がでるまで自転車に乗りなさい』と言われてビックリしたけど、所長の言っていることは全部正しいと思いました。人間としても理想の姿でした」


1年間の養成所は在所成績19人中14位とふるわなかったが成績よりも大事なものを学んで卒業した。


同期の藤井優希と磯村


養成所卒業後は山口に戻り、デビュー戦に向けて地元での練習が再開した。

山口には先輩ガールズケイリンレーサーも多く在籍。練習環境は抜群だ。


「5月のデビューに向けて毎日練習していました。ガールズだけじゃなく男子の選手もデビューに向けて力を貸してくれました。レース形式の練習をしてくれたりと、本当に恵まれた環境です。

(渡口)まりあさんからはレースのアドバイスももらいました。自分が分からないことを聞けば何でも教えてくれるし、頼もしい先輩です」



デビュー戦は5月富山で5、3、3着。2場所目の平塚で1、3、6着。3場所目の松山で1、4、2着。ルーキーシリーズ3開催は全て決勝進出。優勝こそなかったが初勝利もゲットして、上々の滑り出しを果たした。


「デビュー戦は緊張しました。でも3日間走り終わって、こんなにたくさんの賞金をもらえることにビックリしてうれしかったです。

高校を卒業して養成所に入るまでの短い期間でホテル清掃のバイトをしたことがあったけど、初めての賞金は本当にうれしかった。初めての賞金は使わないですぐ銀行にぶち込みました(笑)。レースに関してはもっと戦法を増やさないと戦えないなと思いました」



ルーキーシリーズを終えるといよいよ先輩たちとの対戦が始まる。

本格デビュー戦は7月弥彦。1期生のレジェンド加瀬加奈子に、ガールズグランプリ2回優勝の実力者・梶田舞と同じレースだった。


先輩との初めての対戦を前に磯村光舞はある思いを胸に開催へ臨んだ。

「本格デビューの弥彦は存在をアピールする場所。とにかく自分からレース動かそう」


予選1は打鐘が鳴る4角から一気にカマシ先行。前受けの加瀬加奈子を叩いて主導権を取りに行った。単騎のカマシになってしまい、番手に加瀬加奈子がはまる展開になり、最終2角から番手まくりを打たれてしまい6着になったが、レース後は加瀬加奈子から声を掛けてもらった。


「自力を出していけば必ず強くなるよ」

自分からレースを動かしたことで加瀬加奈子に存在をアピール。アドバイスももらえた。この開催を振り返り「加瀬加奈子さんみたいになりたいと思いました。尊敬です。先行で勝ち切ることのすごさを見せてもらいました」

加瀬加奈子はこの開催で3連勝の完全V。磯村にとっても忘れられない開催となった。


8月の西武園では本格デビュー後初の決勝進出も果たした。9月の和歌山最終日には一般戦だが、本格デビュー後初勝利もゲット。一歩ずつだが前にしっかり進んでいる。


「自分の今のスタイルは、風を一回は切るレース。西武園は自分のレースをして決勝に乗れてよかった。 和歌山の初勝利はまくりだったけど勝ててホッとした。同期が1着を取っていて、少し焦りがあったのでよかったです」


11月には地元防府で開催されたルーキーシリーズプラスに参加。5着と結果を残すことはできなかった。

優勝したのは在所1位で卒業記念レースを優勝した仲澤春香だった。


写真上段左から大浦彩瑛、豊田美香中島瞳、高木萌那

下段左から伊藤優里、磯村、仲澤春香


「ルーキーシリーズプラスが防府で開催されることは養成所の時に聞いていた。ルーキーシリーズの成績上位が選ばれるので、5月6月のルーキーシリーズは守りに入って走っていましたね。

選手になる前、清水(裕友)さんが優勝した記念開催を見ていて、お客さんがいっぱいいて、その中で結果を出す姿がかっこよかったし、自分もあの舞台に立ちたいって思っていました。

レースを終えて、脚力不足と、気持ちが弱くて今のままでは上の舞台では戦えないので、今回の経験を生かして変わっていこうと思いました」



126期は仲澤春香が優勝を積み重ね、引っ張っている状況だ。

「(仲澤)春香さんとは事前研修から一緒。同期だし春香さんみたいに勝てる選手になりたい。同期のレースは全部チェックしているけど、春香さんは強すぎて『今日はどう勝つんだろ?』って感じで見ています。春香さんに少しでも追い付けるように脚力を付けていきたい」


仲澤春香と磯村


磯村光舞の挑戦はまだ始まったばかり。

名前の由来は「人生にある困難を光が舞うようにひらりと乗り越えられるように」。


「渡口まりあさん、山原さくらさん、加瀬加奈子さんのように自力で勝てる選手になりたい」


ラインのないガールズケイリンでは自力選手は苦しい場面が多数ある。

しかし困難な状況におかれても、光が舞うようにひらりと乗り越えた先には輝く未来が待っているはずだ。



磯村光舞 Hirari Isomura



誕生日:2004年9月15日

身長:165.0cm

期別:126期

登録地:山口県


松本直 Suguru Matsumoto



誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ(競輪記者歴13年)


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