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<後編>もうすぐ21歳の新星!先行勝負でガールズグランプリ優勝を目指して 中島瞳 【松本直のガールズケイリンちょっとイイ話】

特別企画 2025.09.28



“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。



■前編はコチラ



中島瞳は2023年5月に126期として日本競輪選手養成所に入学。初めて親元を離れて最初はホームシックになることもあったが、同期の仲間と打ち解けると楽しい日々を過ごした。競走訓練では内容にこだわってレースに臨んだ。これは師匠・太田真一の教えでもあった。


「養成所の生活は楽しかったですよ。お菓子パーティーをしたりして、いろんな話をして毎日過ごしていた。競走訓練は自力を出すことを意識して走った。師匠からも養成所の着順は意識するなと言われていたし、内容にこだわりました」


126期を語る上で、ナショナルチームで活躍している仲澤春香の存在は切り離せない。

もちろん中島も負けたくない同期のライバルだった。


「126期は仲澤春香さんの1強だった。なにをやっても強かったけど悔しかったですね」


それでも最後の記録会ではゴールデンキャップを獲得。卒業記念レースは予選2走を逃げて2連勝。決勝も最終ホーム3番手からまくり発進。その上を仲澤春香にまくられてしまい5着に終わったが、力を出し切って卒業記念レースを終えた。

在所成績2位、卒業記念レースは決勝5着に終わったが、やりたいことをやって1年間の養成所生活を終えた。


卒業式が終わり、地元に戻ると師匠や仲間と練習をスタート。

5月に入るとすぐにデビュー戦のルーキーシリーズが始まった。

第1戦の平塚は師匠の太田真一、同県の同期メンバーもいたことが心強かったと振り返る。


「高校生の頃から師匠の太田さんにはアドバイスをもらっていたので、デビュー戦が一緒だったのは頼もしかった。走り方を聞いたり、レースが終わったあと反省会をしたりとお話することができたので。でも2戦目の函館からは師匠もいなかったし、全て自分で考えて走らないといけない。分からないことや不安な気持ちがあったので、仲澤春香さんに話を聞いてもらっていました。仲澤さんからは『ひとみんなら脚力があるから大丈夫だよ』って言ってもらえて、なんとか乗り切ることができました。函館では予選で初勝利も挙げることができてホッとしました」


ルーキーシリーズは3場所参加。第1戦の平塚が決勝3着。第2戦の函館が決勝2着。第3戦の松山が決勝7着。優勝こそできなかったが上々の滑り出しを決めた。


「養成所でゴールデンキャップをとって報奨金がもらえた時もうれしかったけど、デビューして賞金がもらえた時が本当にうれしかった。高校を卒業してこんな大金は見たことがなかったし、大好きな自転車に乗ってレースをしたら賞金がもらえる。競輪選手って天職だと思いましたよ」


126期の同期と。上段左から中島、伊藤優里大浦彩瑛

下段左から是永ゆうき野寺梓普久原美海


ルーキーシリーズ後の初レースは7月の大宮。高校生の頃から走り慣れたバンクで先輩レーサーたちに胸を借りた。


「地元のデビュー戦はめちゃくちゃ緊張しました。地元大宮で走れることはうれしかったけど、メンバーがすごかった。石井寛子さんに尾方真生さん。ガールズグランプリ出場メンバーと一緒に走るのかってなったら震えましたよ。前検日に先輩へあいさつをしたりしてずっと緊張。レース当日も発走前控室に入って選手紹介に行ったあと、戻ってきたら先輩たちは部屋から出ていく人もいるし、それぞれのルーティーンをしている。自分はルーティーンが何にもないし、部屋から出てもいいのか分からなかった。同期の是永ゆうきちゃんとどうすればいいかねってレースが終わったあと話しました」


そんな緊張感マックスの大宮だったが、2走目には1着をゲットした。このレースは師匠太田真一との練習の成果だったと振り返った。


「大宮2日目の1着はいつも太田さんと練習でやっていたことを出せた感じ。前々に踏んでいって、カマしてくる選手に飛び付いて差す。番手に入ってからも落ち着いて抜け出すことができて1着。師匠との練習のおかげでした」


その後の福井では先輩相手に準優勝を飾り、在所成績2位の看板通りに戦歴を残していたが、8月の地元西武園で落車のアクシデントが起きてしまった。


「西武園の落車は自分のミス。前走者にハウスしてしまった。内に詰まる展開にしたのも自分。踏めない展開作りをしたのも自分。もったいないレースをしてしまいました」


11月の防府ではルーキーシリーズの成績上位者による単発レース、ルーキーシリーズプラスに参加した。同期の先頭を突っ走る仲澤春香とのマッチアップは中島に衝撃を与えることとなった。


「卒業記念レース、ルーキーシリーズ以来で仲澤春香さんと対戦したけど、さらに強くなっていたし力の差を感じた。自分はまだまだだなって思いましたし、自分も優勝したいなって思わせてくれました」



年が明けると名古屋、高松と決勝進出を逃してしまった。このままではまずいと思って臨んだ小倉では4着、1着、1着。初優勝をつかみ取ったのだ。


「人生って分からないですよね。名古屋、高松で決勝にも乗れなかったのに、次の小倉でいきなり優勝することができた。気持ちの部分が大きかったです。言い方が難しいけど小倉は負けてもいいから自力をしっかり出そうって思ってレースに臨んだ。何もしないで大敗することは嫌だったので。そうしたらまさかの優勝ですよ。びっくりです。決勝も先行するつもりで前に出たら、内から吉岡詩織さんが駆けて行く展開で番手に入れた。練習でもやったことがないし、『こんな展開あるの』ってびっくりしたけど、そのあとは冷静に走って優勝することができました。この時はぜんそく気味だったし、3日間できることを頑張ろうって思っていたのにまさかの優勝でした」


喉から手が出るくらい欲しかった優勝だが、いざ結果を出すと冷静に自分の立ち位置を見つめ直したそうだ。


「小倉の初優勝はうれしかったけど、浮かれることはなかった。ここで一喜一憂してはいけないと思ったから。師匠からも『おめでとう。やっと優勝できたか。まだまだ頑張りどきだから』って言われたし、自分でもここでフワフワしていたらダメだと思ったので、より頑張らないといけない感じでした」


4月には前年後期の124期、126期の成績優秀者による単発レース「ガールズ フレッシュクイーン」にも参加。同期の仲澤春香も参加していたが、優勝したのは1期上の先輩・熊谷芽緯だった。


前受けから熊谷芽緯が突っ張り先行。連勝が続いていた同期の仲澤春香が敗退と中島にとっては出番がなく終わってしまった悔しいレースになった。


「仕掛けることができず後ろのまま終わってしまいましたね。気持ちの弱さが出たレースでした」


ガールズ フレッシュクイーンのゴール前


5月の函館で落車もあったが大事に至らず、順調にレースを重ねていく中で経験を積んでいった。

8月の平塚では1月小倉に続く2回目の優勝を飾った。2日目には上がりタイム11秒9もたたき出した。


「平塚は女子オールスター競輪の参加メンバーがいない開催だったけど、優勝することができてよかったです。デビューから1年たってようやく自分でレースの構成を考えることができてきたような気がします。ガールズケイリンのレースはほとんど見るようにしていて、自分ならどう走るかとか考えている。すこしずつだけど成長できていると思います」


2回目の優勝を飾った平塚のあとには、急きょGⅠ・女子オールスター競輪に補充参加。勝ち上がりのレースではなかったが、GⅠレースに参加。考え方も変わってきたと話してくれた。


「4月の岐阜で前座戦を走ったのですが、GⅠ・オールガールズクラシックの雰囲気を感じることができました。8月のGⅠ・女子オールスター競輪は補充だったけど1走できてよかった。まだGⅠに出たいと言えるような成績ではないから一歩ずつ前に進んでいきたい」とガールズケイリンに前向きになっている。


126期の同期と。左から磯村光舞、是永ゆうき、中島、小林諒


直近の目標は来年3月に防府で開催されるガールズ フレッシュクイーンの出場権獲得だ。中島ら126期にとってはラストチャンス。126期、128期の成績上位者7人に入ることを目指していきたい。


「伊東のフレッシュクイーンは何もできなかったし、防府のフレッシュクイーンは出たいし何かしたい。そのためには普通開催でしっかり決勝に乗れる選手になりたい」


養成所を卒業する時に掲げた目標は「賞金女王」になること。

デビューから1年が経過し、ようやくガールズケイリンの流れに乗り始めた。

恵まれた体格から繰り出す自力は見どころ十分。

師匠の太田真一のように先行勝負でグランプリ優勝を目指して今は力を付けていくのみ。

9月27日に21歳になる新星の挑戦から目が離せない。



中島瞳 Hitomi Nakajima



誕生日:2004年9月27日

身長:157.0cm

期別:126期

登録地:埼玉県


松本直 Suguru Matsumoto



誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ


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