佐藤慎太郎選手
2023.03.16
競輪界最強の9選手“S級S班”。
約2,200名いる競輪選手(男子)の中で「GⅠ優勝」と「獲得賞金」でその座を勝ち取った者だけが君臨できる、競輪界の最上位ランクです。
2023年S級S班の9選手をインタビューで紹介します!
第6回目は、佐藤慎太郎(さとう・しんたろう)選手です。
根性が鍛えられた高校自転車部
福島県東白川郡出身で、小さい頃はスポーツ少年団でソフトボール、その後は中学まで野球をやっていました。
親父が競輪ファンだったんです。
小さい頃から「将来は自分の実力次第で稼げる仕事が良いんじゃないか」と、会社員だった親父に言われていました。
その影響もあり「競輪選手になろう」と決めて、自転車競技部のある高校に進学しました。
高校時代はとにかく、部活のトレーニングが苦しかったです。
自転車競技部の生徒は夏休み前になると、“どんより”してくるんですよ…。
夏休みの合宿では朝5時半からロードで70km、朝食後には100km、午後にまた70km乗る毎日。本当に過酷でした。
そのおかげで精神面は強くなったし、プロになってからも生きていると思います。
競輪学校(現:日本競輪選手養成所)は、2 回目の受験で合格しました。
当時は選手が約4,000人いる中で、S級は約400人のみ。
※2023年3月15日現在、競輪選手(男子)は2,234名おり、その中でS級は674名。
とにかくS級に上がることが憧れであり目標でした。
デビュー後は、先行選手として“自力”で走っていましたが、“先行”ではあまり勝つことができませんでした。
S級に上がってから、先輩の伏見(俊昭)さんや岡部(芳幸)さん、金古(将人)さんたちと一緒に練習させてもらったことがあったんです。
先輩たちとの実力差がありすぎて「こんな人たちと“自力”で勝負できるのかな」と、自分に対する疑いが生まれました。
「早くに“追い込み”へチェンジした方が、無駄な時間を過ごさずに済むんじゃないか」と思ったのが24歳くらいの時でしたね。
GⅠ制覇と大怪我
それから、だんだんと“自在”へシフトしていきました。
完全に追い込みへチェンジした、デビュー7年目の2003年。
全日本選抜競輪で初めてGⅠを獲りました。
レース後、先輩方が迎えてくれて、涙がこみ上げてきましたね。
「追い込み選手としての佐藤慎太郎が、競輪界に認めてもらえたかな」
そう思ったことを覚えています。
それから4年連続でグランプリに出場しましたが、2008年に足首骨折の怪我をしてしまいました。
同じ時期に“大ギア”の競輪に変わったこともあり、リズムが崩れました。
調子を戻すのに、1〜2年はかかりましたね。
怪我で走れない時期を経験して「走れる時を楽しまなくちゃいけないし、いい加減な気持ちでトレーニングはできない」と痛感しました。
それに、そんな自分に対して「頑張ってくれ」と手紙をくれる人がたくさん居たんです。
自分だけのためではなく「応援してくれる人のためにも頑張らないといけない」と、心から思いました。
怪我をした時期は、決してマイナスだけではなかったと思います。
後輩の活躍に一念発起
怪我からの復帰後もS級をキープできていました。
GⅠにも復帰して「この辺をキープしていけば良い」という、その状況に満足する気持ちも当時はあったと思います。
でも、新田(祐大)や(渡邉)一成の活躍を見て、意識が変わりました。
二人が連携してGⅠを優勝して喜び合っている姿が、本当に羨ましく感じたんです。
せっかく素晴らしい仲間が居るんだから、その舞台に自分も上がりたい
その思いで一念発起しました。
いままでのトレーニング内容を「全て変えてやろう!」と思ったのが、2017年でした。
外国人選手が短期登録で競輪に出場していて、同じレースにあっせんされた時、世界で活躍する彼らはどんなトレーニングをしているのか、細かく聞いてみたんです。
(デニス・)ドミトリエフやテオ・ボスが教えてくれたトレーニングメニューは、いままで自分がやってきた内容とは全く違いました。
身体がヘトヘトになるようなトレーニングではないけど、集中してできる効率的なトレーニングメニューでした。
年齢的にも効率を求めていかなきゃいけない時期でしたし、思い切って教えてもらったトレーニングを実践してみました。
それが、2019年のグランプリ出場・優勝に繋がったと思っています。
「KEIRINグランプリ2019」優勝時
「ドミトリエフとテオ・ボスには、お礼で100万円ぐらいやんなきゃいけない」と本気で考えましたよ笑
いまでも彼らはGⅠで決勝進出したりすると、Instagramでメッセージをくれるんです。
ずっと一緒に過ごしたわけではないけど、“仲間”だと感じられることが嬉しいです。
外国人選手は強くても、走る場所が無くて引退していく選手がたくさんいます。
それを思うと、余計にしっかり「頑張らなくちゃ」という気持ちにもなりますね。
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