『やればできる』は魔法の合言葉 松尾智佳

2023.03.14

松尾自身もそれなりに戦えると思って臨んだ7月京王閣のデビュー戦。

結果は次点で決勝進出を逃し負け戦回りとなってしまったのだ。

最終日の一般戦で初勝利こそゲットしたが、心中穏やかではなかった。

 

「焦りましたね。

それなりにやっていける自信はあったけど、デビュー戦、デビュー2戦目の松戸と続けて決勝に乗ることができなかった。

自分も練習をしていたつもりだったけど、他のみんなはもっと練習をしていたんだなと思いました」

 

初の決勝進出はデビュー3戦目の平塚。

ようやく決勝に乗れたことがうれしかったと振り返った。

 

 

今でこそガールズケイリンは小松島を除く全国各地の競輪場で開催されているが、ガールズケイリン1年目は限られた競輪場だけでの開催だった。

 

松尾の地元松山は1年目からガールズケイリンを開催する競輪場であり、初のガールズケイリン開催ではあっせんが入り、気合も入ったそうだ。

 

「地元の松山競輪だけは特別なんです。

デビュー年の12月、松山のあっせんが入ったときはうれしかったですね。

3戦目の平塚で決勝に乗ったあと、またしばらく決勝に乗れなかった。

でも地元では絶対に決勝に乗るって強い気持ちで走りました。

結果は2、3着で決勝進出。

決勝も加瀬(加奈子)さんに続いて2着で準優勝。

本当にうれしかった。

アマチュアのころから応援してくれている人たちの声援が力になりました。

緊張もするけど、地元では力が入りました」

 

年が変わり1月の地元戦では予選での1着もゲット。

決勝進出の常連にもなり賞金も稼げるようになったが、5月には後輩の104期がデビューして、またまた焦ることになってしまった。

 

「2期(104期)は強い選手が多いと聞いていたので、1期生はぴりつきましたね。

石井寛子さんは自転車競技やエキシビションで知っていたけど、寛子さん以外のメンバーも本当に強かった。

このままじゃまずいって気持ちになりました」

 

気持ちが入ったことで集中力が増すと、得意の追走技術の精度はアップ。

車券戦術に欠かせない選手となり、ガールズケイリンの中心メンバーとなった。

 

左から板根茜弥、松尾、荒川ひかり

 

デビュー3年目の2014年3月取手では初優勝もゲットした。

「初優勝はたまたま。

(荒牧)聖未の後ろにいたら、聖未と石井貴子ちゃん(東京)が踏み合う展開になって、付いて行ったら差せちゃったって感じ。

仲のいい山口菜津子もいた開催だったので取手で優勝できたことはうれしかったですね」

 

同年7月には初開催だったガールズケイリンフェスティバル(松戸)にも参加。

順風満帆に進んでいったが、12月の地元松山で鎖骨の粉砕骨折。

復帰までは3カ月を要する大けがを負ってしまった。

しかしこの落車後は成績をあまり落とすことがなかった。

 

成績転落の大きな転換期になってしまったのは16年8月弥彦の落車失格だった。

 

「地元松山の落車で折った鎖骨は痛かったですけど、復帰したあとは普通に走ることができました。

でも弥彦の落車失格はメンタル、心が折れてしまった。

他の人を巻き込んでしまったし、心がキツかった。

弥彦の落車以降は走り方が変わってしまった。

レースが小さくなってしまって、成績もどんどん落ちていった」

 

追走技術で勝負していた松尾からアグレッシブさがなくなってしまうと、決勝に乗ることがめっきり減ってしまった。

 

また同じ時期には盟友だった山口菜津子の代謝での引退もあり、松尾のメンタルはガタ落ちだったそうだ。

 

左から藤原亜衣里、山口菜津子、松尾、中川諒子

 

「菜津子がいなくなったことも大きかったですね。

デビューから四国同士でずっと一緒にやってきたので。

代謝回避へ菜津子と仲良しの藤原亜衣里さん、中川諒子さん、荒牧聖未と一緒に沖縄へ合宿に行ったりしたんですが…

 

 

菜津子が代謝で引退した時期が1番キツかったですね。

自分も選手を辞めたら楽になるかなと思ったりしたけど、大学を卒業して選手になったので選手を辞めてもやることがない。

もう少し頑張ろうと思い直しました」

 

左から藤原亜衣里、中川諒子、松尾、荒牧聖未、山口菜津子

 

2022年は1回も決勝に乗れない1年だったが、2022年後期には代謝回避の目安となる47点を確保。

少しだけ心に余裕を持つことができた。

今年は1月小倉で梶田舞にマーク。

2月の和歌山では林真奈美にマーク。

得意の追走技術が戻ってきた。

 

和歌山では2021年7月豊橋以来の決勝進出も決めた。

今年は巻き返しの1年にしていきたい。

 

「昨年はコロナにも罹ってしまい大変だった。

でも47点を取れたことが大きい。

今年の目標は1回でも多く決勝に乗ること。

そしてケガをしない。落車をしないこと」

 

 

ガールズケイリンの選手を目指したときの夢は2つ。

「モルディブへ旅行に行くこと」と「大理石のキッチンがある家に住むこと」。

デビュー当時の夢は叶っていないだけに、まだまだ辞められない。

 

「モルディブは友達といくとこじゃない(笑)パートナーといきたい。

旅行するためにはまだまだ賞金をいっぱい稼がないと。

ガールズケイリン選手は楽しい仕事だし頑張りますよ。

大理石のキッチンは友達のボートレーサーの平高奈菜ちゃんの家で見たからもういいかな(笑)」

 

左から西島叶子、中村美那、松尾

 

開催中の松尾の周りにはいつも笑顔があふれている。

同期、後輩に慕われて、楽しくガールズケイリンライフを送っている。

 

左から愛媛所属の松尾、日野友葵、佐伯智恵、渡部遥

 

松尾智佳の原点は行動力。

母校済美高校のモットー「『やればできる』は魔法の合言葉」が松尾の体の中には染みついている。

 

腐りかけて心が折れた時期もあったが復調ムード。

『やればできる』の精神で2023年は1回でも多く車券に貢献するつもりだ。

 

 

松尾智佳 Tomoka Matsuo

生年月日:1988年4月24日

身長:155.4cm

期別:102期

登録地:愛媛県

 

 

松本直  Suguru Matsumoto

誕生日:1979年5月1日

所属:デイリースポーツ(競輪記者歴13年)

 

 

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