【柔道】羽賀龍之介×深谷知広 アスリート対談 後編

2023.03.02

競輪選手と他競技選手の『アスリート対談』

 

〜第3回〜
【柔道】羽賀龍之介 × 深谷知広

 

前編では「互いの競技へのイメージ」・「オリンピック」について語っていただきました。
後編の話題は「年齢」との向き合い方、それぞれが取り組む「後進育成」など。

最後には、羽賀選手が深谷知広にチャレンジ!?

 

 

「年齢」との向き合い

羽賀 柔道は30歳まで現役選手をやっていると「よくやっているね」という感じなんです。
僕はもうすぐ32歳になり、チーム(旭化成)の中でも最年長です。
深谷さんは年齢を重ねて、「衰え」を感じることはありますか?

深谷 めちゃくちゃあります笑
例えば、筋肉痛の抜ける期間が伸びましたし、追い込んでから調子が上がってくる期間も伸びました。
でも“自転車という道具”に対する積み重ねは、年齢と共に上がっていくので、そこで相殺する感じですかね。

僕はレースで主導権を争う役割なんです。
“イキのいいピチピチした若手”と主導権を争うことが多いんですけど、それが本当に嫌ですね…笑

羽賀 相手の若手選手も嫌でしょうね!笑
見ている側は、その対峙にワクワクしますよね。

深谷 「見ていて楽しい」は、選手側は大変なんです…。

羽賀 それは僕も分かります笑

深谷 柔道は“自分の身体一つ”ですよね。
反応・パワー・体力など、どこから衰えを感じますか?

羽賀 反応が鈍る感覚はありますが、キャリアを重ねると「戦略」が上手くなっていきます。
でも、組み合って投げられると、めちゃくちゃヘコむんですよ…。

例えば、小さい頃に「頑張れよ」と声を掛けていた10歳以上も年下の選手と試合で当たったりして、その選手に投げられたらヘコむじゃないですか!笑
それだけでなく、絞め上げられたり、腕を取られたりもしますからね…笑

深谷 制圧される感じですか…。

羽賀 プライドが保てなくなって、辞めていく選手も多いと感じます。
僕も「絶対負けたくない」という気持ちが無くなったら、身を引いたほうがいいと思っています。

年齢を重ねて穏やかになってしまったら、勝負師としてはダメです。
「絶対負けたくない」という気持ちが、自分の中で芽生える瞬間をいまも感じているので、それがある限りはやれるんじゃないかと思います。

 

 

今回、深谷さんに聞きたかったのは、競輪選手は年間を通してレースに出場しますよね。
1年間、調子を維持することはすごく大変ですし、ピークをどこに持っていくのかも難しそうですね。

深谷 競輪選手をやっていて、難しいのはそのポイントです。
自分の中では年間2回の“大きい波”を作っていますが、“波”の低い時でもレースに出なきゃいけません。
どんな状態でも車券の対象にはなっているので、難しいところではありますね。

でも、どれだけ状態が悪くても、出場機会が必ずあるというところは、魅力でもあると思います。
自分が努力した結果をアピールする場所が確約されているのは、競輪の良い面ですね。

羽賀 レース数も多く大変でしょうけど、年齢を重ねても現役を続けられている選手も大勢いて羨ましいです。

 

「後進育成」への取り組み

深谷 地元・静岡の選手たちのトレーニングを見ています。

ナショナルチームに所属していた頃、競輪選手のトレーニングを見て「こうしたら、もっと強くなるのに」という思いがありました。
ナショナルチームで経験したことを全て、競輪へ持って行こうと思ったのがキッカケです。

いまは僕がメニューを組んで、スケジュールを決めています。

 

 

清水宏保さん(スピードスケート長野オリンピック金メダリスト)とお会いして、スピードスケートのトレーニングも取り入れるようになりました。
新しいことを取り入れて、選手たちが飽きずに、楽しんでできるよう工夫をしています。

それぞれの選手にレースがあるので、コンディショニングの難しさはありますが、それを考えることも面白いと感じています。

みんなが強くなれば地区が強くなり、それが自分にも返ってくる。
良い循環が生まれていると思います。

羽賀 柔道選手は引退後、指導者になる選手も多いですね。
僕は子どもに向けて開催される柔道教室には、積極的に指導しに行くようにしています。

それは現役選手の義務であるとも思っています。
子どもたちは、現役選手から「頑張れ」と声をかけられたり、握手されたりしたら嬉しいですよね。
僕自身も子どもの頃のそういった体験が、強烈に記憶に残っています。

そういうことは、競技で結果を残す以上に大切なことなんじゃないかと思いますし、柔道はもちろん、スポーツ全体の価値を高めることになるんだと思います。

 

 

深谷 羽賀さんがTwitterに書いていた「柔道教室では本気で投げる」という言葉に、すごく共感したんです。
競輪でも子供を集めて模擬レースをすることがあるので、感動させられるようなレースを見せないといけないと思っています。

 

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