
“ミスターガールズケイリン”の異名を持つデイリースポーツ・松本直記者しか知らない、ガールズ選手の秘話や“いい話”を紹介します。

■前編は
コチラ
國村美留莉のデビューは2020年5月の広島。この年から始まった競輪ルーキーシリーズからスタート。養成所で1年間一緒に生活してきたこともあり、レースは走りやすかった。
デビュー戦の広島は2着、3着で予選を突破。決勝も4着と父(國村洋)譲りの競輪センスを発揮。2世選手として注目を浴びたが、本人の感覚は違っていた。
「ルーキーシリーズは同期だけのレース。走り方や何がしたいかが分かる部分があった。だからこそ、先輩たちとの対戦は全然違うぞって思っていたので、気持ちは引き締めていました」


同期の森内愛香(2025年引退)と
予感は的中。7月の小倉では6着、6着、3着と予選敗退。先輩の厚い壁をいきなり感じる船出となった。
「小倉はよく覚えています。脚力じゃなくて組み立てで勝負して行くタイプだから先輩相手に通用するわけないです。開催が終わったあとは小倉競輪場が嫌いになりました」
デビュー1年目は地元の防府で2回決勝進出と結果を残せたが「地元のアドバンテージがあっただけ。先輩との差を感じる日々でした」と33戦0勝で終わったルーキーイヤーを振り返った。

デビュー2年目の2021年は1月広島最終日の一般戦で初白星を上げると、12月の岐阜一般戦まで1年間で負け戦だが10勝を上げた。
3年目の2022年は準優勝が2回(4月玉野・優勝は山原さくら、9月岸和田・優勝は當銘直美)と好成績を残して、初優勝間近と思ったが、その後は低空飛行が続いた。
2023年は4勝、2024年は0勝とふがいない成績が続いてしまった。
「父からデビューしてすぐの頃、『3年から5年で一度選手生活に慣れてしまうから気を付けなさい』って言われたことを思い出しました。防府競輪場がバンク改修で使えなかったこともあるんですが、慣れてしまった部分もあったのかもしれないですね。競走得点を落とした時期で苦しかったです」
2024年6月の小田原ではスタート直後に前走者に接触して落車。過失走行で失格を犯してしまった。
「恥ずかしい限りのレースでした。位置取りで売っているのに、接触で落車をするとは…。自分に乗り上げる選手がいなかったので、そこだけはよかったけど迷惑をかけてしまった。選手になってからの落車で一番ダメージがありました。頭を強く打ったので脳しんとう。記憶が少し飛んでいました」
2024年はデビュー以降初めて年間を通して1着0回と過去最悪のシーズンを過ごした。

118期の同期、保立沙織、岡本二菜と
年が明けて2025年に入っても流れはあまり変わらなかったが、4月に岐阜で行われたGⅠ・オールガールズクラシックの前座戦に参加。GⅠではなかったが前座戦の最終日一般戦で1着。2023年12月1日小倉以来、1年4カ月ぶりの白星をゲットしたのだ。
「4月岐阜の時は初日、2日目とバンクが重くて嫌だなって感じだったけど、最終日の一般戦では、なんとか前まで差しが届いた感じ。久しぶりの1着だったから、本当にうれしかった。勝ち上がりじゃない一般戦でもやっぱり1着っていいなと心から思えました。競走得点を落としてしまうと、みんなの動きを見すぎてしまい自分から自信を持って動けなくなっていた。自分の生命線は判断力と空いているコースを突っ込むことなのに、その動きができなくなっていた。でも岐阜で久しぶりに1着を取れたら、そのあとは流れが良くなりましたね」

前年未勝利でどうなることかと思ったが、GⅠ前座戦で久しぶりの1着をつかむと、6月富山で予選2走を3着2本で久しぶりの決勝進出。続く四日市4日制でも予選2走を3着2本で準決進出。堅実な追走技術を発揮して車券に貢献する國村美留莉らしさが戻ってきた。
上昇気流に乗ると、8月の大垣ではついに念願の初優勝をつかみ取った。
「8月の大垣はGⅠ・女子オールスター競輪参加組がいない開催でした。参加メンバーの中で直近4カ月の競走得点も上から5番目だったので、決勝には乗らないとなと思い開催に入りました。2着、2着で決勝に乗れて、決勝はまさか優勝。最後も藤原春陽ちゃんを差し切ったかどうか自分でも確信がなかったから、ゴール後ガッツポーズもできなかった。敢闘門に戻って、周りの選手に聞いても『多分勝っていると思うよ…』って感じだから、決定放送が出るまでは実感がなかったです」
初優勝をつかめた大きな要因は慣れからの脱却だったのかもしれない。
デビュー当時、師匠である父から言われた「慣れてしまうことの怖さ」を身をもって実感。
このままではまずいと練習内容をよく考えるようになり、効率よく練習をするようになった。
いままでバンクが改修中で使えなかったことをマイナスに考えるのではなく、ウエイトトレーニングをすることで、新しい刺激を体に入れる。その効果はてきめんで、8月の大垣で初優勝、そして12月の小倉で2回目の優勝を手に入れた。
最終戦となった久留米も準優勝とキャリアハイの成績を残した。
「2回目の小倉は繰り上がり優勝。同じ年の藤田まりあが失格で2着入線だった自分が繰り上がり1着で優勝。だから優勝した!って感じではないんですよ。今年ははっきり1着だって感じの優勝をしたいですね」

2026年はさらなる飛躍を目指していくつもりだ。
防府には國村美留莉以外にもガールズケイリン選手が6人所属している。日々の練習環境は抜群な土地だ。
「今の調子をキープするだけではなく、少しずつ上げていきたいですね。(山原)さくらさんが高知支部から移籍してくれて、身近にガールズケイリンのトップレーサーがいて、自分とのレベルの違いを感じている。優勝を2回できたことでGⅠの出場も見えてきたけど、今の脚力でGⅠに行っても参加するだけになってしまう。これからはGⅠでも戦えるようにレースと練習で自信を付けていきたい」
小さい頃から大好きな父の背中を追って競輪界に飛び込んだ。
「お父さんは面白くて格好良いんです。大好きだし、今は一緒の仕事ができて楽しい。昨年は2回優勝できて、ごはんに連れていくことができたけど、今年は両親と弟を連れて叙々苑の焼肉に連れていきたいですね(笑)」

昨年は2回の優勝で一気に競走得点が上昇したが、今年はベースの力を付けていく1年。GⅠに出て戦えるポテンシャルは持っている。競輪選手の父から受け継いだDNAは混戦になれば必ず生きていくはずだ。
今年の優勝はゴール後に大きくガッツポーズを決めてみせる!!
國村美留莉 Miruri Kunimura

誕生日:2000年2月23日
身長:150.5cm
期別:118期
登録地:山口県
松本直 Suguru Matsumoto


誕生日:1979年5月1日
所属:デイリースポーツ